第181話 こちらスタンピードの現場です3
火薬が破裂する音に満たされる中、聞き覚えのある咆哮を風が運んできた。
「ブモォォォ――ッ」
――――ミノタウルスだ。
第10層で
「ひゃあ!」
と塹壕の上に陣取っていた領軍の下士官が滑り落ちて来た。
「き、貴様ら、あのようなバケモンに慣れているだろ? ここは貴様らに任す。ここを死守しておけ、俺は上に報告してくるっ」
そう言い残すと通路用の
「は?! 敵前逃亡は死罪だったんじゃねぇのか」
あちこちで罵声を浴びながらもその下士官は
「うるさいっ、報告に行くのだ。貴様らはここを死守しておけ」
と嘘くさい応酬をしている。
「放っておけ、居たところでどうせ足手纏いだ」
遠くでマーベルの声が聞こえて、ギャハハと嘲笑の声が上がる。
まだ居たの? ありゃまぁ、
だが不思議とその声は、ミノタウルスの咆哮に浮き足だった冒険者たちを落ち着かせた。
絶え間なく矢を射掛ける冒険者たちの後ろを、マーベルが下士官と入れ替わりに入って来る。
「脅威度20(のミノタウルス)まで来やがったか……」
と
俺はというとあの時は必死に逃げ回った記憶しか無いから、Aランカーたちの対処を見つつ進退を決める事にした。
「よぅ、
「ああ、そうだが」
「あと炸裂弾はどれくらい持って来ている?」
ん……? と『在庫システム』を開いて炸裂弾の項目までスクロールする。
「3,000ってとこかな?」
「なら、全部矢筒に補給して回れ。これから奴らの目鼻を塞ぐ」
「?……了解」
遠くから肝が冷え上がるような咆哮が響き渡る中、嫌も応もない。
「これで最後だ」と残り一本を振り回す。
「テメェら用意は良いか?! 奴らを目潰しするぞ! しっかり狙ぇ」
マーベルの
「「「「
その狙いを言わずとも伝わっているのは高ランカーの以心伝心ってやつらしい。
「撃てっ」
何百の矢が一斉に放たれる擦過音。
俺も
パパパパ――ンッと乾いた音と、破裂した炸裂弾の煙に目の前が真っ白になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます