第176話 秘密兵器2

 レオが見た未来――ドラゴンの飛来に対抗するために、ある兵器を改造していた。

 案内された先は城壁の上に設けられた砲台で、そこに配線の走り回る大砲が鎮座していた。


「へぇ……この短期間でよく仕上げたもんだ」

 

 見上げる砲台は2メートルを軽く超す。砲身は竹筒のような節別れしたレールが2本飛び出ており、その節から配線が砲台に集約されている。

 その2本のレールの上に黒光りする砲身が鎮座し、大砲と大きく違うのは所々を一回り大きな筒で覆われているところだ。


「よくこんなもんが手に入ったな?」


「迷宮都市だぜ? 迷宮暴走スタンピードとは言わねぇが、ワイバーンクラスが紛れ込んでくる時の備えくらいあるさ」


 本来は巨大なバリスタ(城攻戦用のボウガンの大きなもの)だが、そこは異世界。打ち出す丸太のような矢の先に炸裂弾をつけて、音と光で追い払うのが目的なんだそうだ。

 ワイバーンクラスならそれで十分なのだろうが今回はドラゴンだ。


 音と光くらいでは脅しにもならない――らしい。

 レオの『鑑定眼真実を見通す目』で鑑定してもらった結果、あまり意味をなさない、と来たもんだ。


「鋼鉄のやいばを弾く鱗で覆われているんだ。例え直撃しても大して効果がないよ」


 なんだって。

 そこでマーベルに領軍に掛け合ってもらい大砲を一台買い付け工房ギルドに改造してもらった。

 やたらと砲身が長く軽く3メートルはある。


「なぁ、ショーカン。これで本当に――」


「まぁ、ぶっつけ本番とは言えテストは必要だよな」


 と地を震わせて押し寄せる魔物の群れに目を向ける。

 事前に集めてもらった魔道士に、薄ら笑いを浮かべた神聖軍のお歴々が雁首を並べる中、台座に据え付けられてある半球状の魔石を指差す。


「冒険者ごときが新兵器だと?」

「多少、魔法が使えると思い上がった下賤の者が」

 

 なんてムカつく批評をしているのは無視をして

「合図したらここへ目掛けて雷撃を放って下さい」

 と言いつつ筒に覆われた鉄の槍を砲身にセットする。


「じゃあ俺がカウントダウンして“今”って言ったらここへ雷撃を放って」


 そう言っている間にも魔物たちが黒い絨毯のように押し寄せて来ている。


「じゃあ始めますよ……3、2、1……今っ」


 パチ――――ンッと空気が震えた。

 雷撃による強力な磁場が発生し同時に砲身を包む筒が発光する。


 パンッと乾いた音ソニックブームと共に鋼鉄の矢が放たれる。着弾と共に地面が捲れ上がって押し寄せる魔物の黒い絨毯が吹き飛んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る