第175話 秘密兵器1
――――城外の塹壕には冒険者たちが配置されている。
『戒厳令が発布され、冒険者
過日、ショーカンが恐れていた事態が実際に起こってしまっていた。
もちろんそれを指揮する領軍の下士官たちも配置こそしているが、大抵は横に広がる塹壕から城壁へつながる縦の塹壕の方へ陣取っている。
「いつでも逃げる気でいやがる」
「バカ、聞かれるぞ」
「かまうもんか。あそこに頑張っているのは俺たちが逃げ出さないように監視しているだけだからな。魔物が来たらそこら辺にはいやしねぇよ。どうあったって俺たちを盾にするつもりだ」
そう不満を燻らせる冒険者たちに後ろからマーベルの声がかかる。
「恨みつらみは終わってから聞いてやる。お前らは魔物退治のプロだろうがよ。後ろで俺らに隠れて震えてる連中に見せつけてやんな」
誰かを探しつつも、すれ違う冒険者たちを塹壕を走り回りながら盛んに鼓舞しているようだ。
「こんなところにいやがったかショーカン!」
ゴツンッとゲンコツを食らわせる音がする。
「……ったぁ、痛ったぁ!マーベルこそこんなところで何してやがるんだって。
「出来上がったんだよ、例の物が!」
「へぇ……無理とか言ってなかったか?」
「おかげで
「そりゃあ豪気な話だ。期待すんなよ、ぶっつけ本番になるからな」
「そこは期待しろって言うところだろうが!」
再びゴツンッとゲンコツの音がする。
「痛ってぇ……」
「ともかく来いっ」
襟首を掴まれてショーカンがマーベルに引きずられて行く。
「何だい……? ありゃあ?」
「わからん。わからんが、何か策があるんじゃねぇか?」
冒険者たちは異様な二人の後ろ姿を見送りながら、肩をすくめた。
――――この10日間は。
俺たちだって無為に過ごしていたわけじゃない。
軍事訓練の合間にマーベルは怪我をした若い冒険者を王都への商隊に押し込んで逃がし、俺とレオはラエルと家政婦さん、その家族が避難できるようにアパートの地下室の周りを収納し拡張した。
もちろんミランダが土魔法で強化してある。
レオが見た未来――
その素材の提供で
「こっちだ」
と案内された先には配線の走り回る大砲が鎮座していた。
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