第169話 出来なければこの街は地図から無くなる
神聖軍の本部に連れて行かれると、その師団長のエリック少将から「川を曲げられるね」と尋ねられる。
やだ、この人危ない人?
眉間を富士山のように八の字に曲げていると、エリック少将は地図の広げてあるテーブルまで手招きした。
「
俺の顔が梅干しを口いっぱい放り込んだようなシワシワな顔と頭上に巨大な?マークが浮かんでいるのを見ると
「少々飛躍してるかな? まず目的を話そう。
と指し示す地図には獲物を荷馬車がすれ違えるくらいの大きな街道が走っている。
「これだと魔物が一気にここまで押し寄せてくる。そこで今掘らせている
そこでだ――と城壁からいくつも伸びる水路を辿り、流れ着く先、ちょうど迷宮都市タレントゥムスの東側に流れるエルベ川を指す。
「この街道を横断する堀を作り、この川から水を引き込めれば足止めできる。速度が落ちた時点で神聖軍の火力で削り、撃ち漏らしを塹壕から仕留めていく」
魔宮街道を横断する赤い線をシャッと引く。
「これまでは時間がない、と諦めていた。君ならできるはずだ」
とエリック少将。
「エルベ川からこの街道までの距離は?」
「約5キロってところだ」
「幅と深さは?」
「狭くても浅くても堀りにならない。最低でも幅3メートルに深さ5メートルは欲しい」
「川の高低差を考えてくれよ。掘るだけじゃなくて川から水を流し込むんだろ? 川の水位より下に掘り進めなきゃならないから深さはもっと深くなるはずだ。そんなの無理だよ」
「ならば堀だけでも良い。水は馬車に樽を積んで川から運ばせても構わない」
「工期は?」
「5日――いや3日で仕上げてくれ。いつ
「おいおい、無茶苦茶だぜ」
自然とタメ口を聞いていたが、偉そうな軍人さんたちがコメカミをヒクヒクさせて睨んでいた。
「あ……最善を尽くし鋭意努力いたしますです、はい」
すぐにシオシオになってソッポを向く。
だが、ダンッと机を叩く音に驚いてエリック少将を見ると冷たい笑いを浮かべていた。
「出来るできないを問うているわけじゃない。やれ――出来なければこの街は地図から無くなる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます