第168話 エリック少将は少々危ない人かも知れない
「エリック少将閣下がお呼びだ。着いてこい」とブレードリヒに神聖軍の本部へ連れて行かれることとなった。
――――ブレードリヒの馬の後ろを着いていくと、
映画に出てくるビバリーヒルズ的豪邸――といえば伝わるかな? うん。
ゴシック建築やロマネスク建築っての?
真っ白な壁の三階建て。
コの字型の
鉄柵で囲まれた広い敷地に、隙間から見える庭には馬車が入り口まで乗り入れられるようなロータリーがあり、そこでブレードリヒが下馬し厩舎員らしき召使いに馬を預けている。
「ここだ。先ぶれも放っていたからすぐお会いになるだろう。着いてこい」
とブレードリヒが威張り腐って先導する。
「へぇ……」
ため息しかでねぇわ。
ふかふかの絨毯を進むとこれまた両開きのドアがあり、歩哨らしき衛兵が敬礼してくる。
俺にじゃないけど。
両開きの扉を抜けると、ちょっとしたパーティーが開けそうな広間に、映画のヒロインが降りてきたらさぞかし絵になりそうな螺旋階段が、広間を囲む二階の廊下に続いている。
その広間に机が並べられ、たくさんの軍人が行き来していた。一番奥に巨大な板に貼り付けられた迷宮都市、タレントゥムスの巨大な地図が掲げられている。
「エリック少将閣下っ、冒険者ショーカンを連れて参りました」
ブレードリヒがいきなり大きな声を出すからビックリする。見るとなんか定規が体の中に入っているんじゃないか? と思うくらい直立不動で敬礼し、まっすぐ一番偉そうな格好をしている男を見ている。
黒いブーツに青の上下、上着はダブルで金ボタンを嵌めている。他は銀色だからボタンで階級を示しているのかな?
肩にジャラジャラのついた肩当てをつけているから、おそらく彼がここのボスらしい。
「ご苦労。ブレードリヒ君は下がってヨシ」
短く返礼すると灰色の瞳を俺に目を向けた。「はっ」と言いつつも、やや不満気に下がっていくブレードリヒくん。
『君はいらないってさ、バイバイちゃ――ん』
なんて思っているとブレードリヒくんに凄い目で睨まれた。
「やぁ、作業中呼び立ててすまなかったね。ショーカン君。ぼくはエリック、神聖軍の少将をしている」
「はぁ……」と曖昧に微笑んでいると
「君は川を曲げられるね?」
って――意味がわからないんですが? やだ、この人危ない人かも知れない。
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