第162話 カイゼル髭のイカれた野郎
洗浄水の樽詰めをしていると「神聖軍さまが来たぞぉぉ――っ」
と先ぶれらしい衛兵の声がした。
「神聖軍さま?」
「きっとアルツール男爵が国軍の出動を要請したんだよ。ずいぶん張り込んだもんだね」
レオの少し驚いた顔に疑問が湧いてくる。
「神聖軍って国軍なんだろ? 国軍の派遣になんでアルツール男爵が張り込む事になるんだい?」
「あのケチな……ってわかんないか」
レオの解説によれば王都軍の派遣を要請した場合、旅費と滞在費は要請した領持ちになるんだそうだ。
「つまり
はぁ……とため息がその場を満たす。
と、
「ミランダさんがお戻りになりました。お二人を呼んでいます」
少し慌て気味なのはただの帰還ってわけじゃないんだろう。
――――――職員に連れられて
「遅いっ! いつまで待たせる気だ!」
と威丈高なキンキン声が響いた。
「いつまで? 呼ばれてすぐに来たんだが?」
当たり前の反論をすると空気が凍りつくのがわかった。
「貴様ぁ、冒険者風情が楯突くかっ!?」
ビシッと音を立てて雷撃が襲ってくる。
目の前が真っ白になって膝から崩れ落ちた。これはアレだ。暗殺ギルドのやつが放って来たやつと同じだ。
「ぐふっ」
たまらずその場に
「控えよ! 下郎がっ」
声を頼りに見上げてみると金ピカの鎧に包まれたガイゼル髭っての? 口の端の髭がピンッと上を向いていけすかないやつ。
「ブレードリヒ・フォン・マリウス少尉である! 下郎ごときが口答えをするなっ」
手にした鞭で打ち据えようと振り上げた。
その手にスルリと手を回しミランダが手を回し鞭を絡め取ってしまう。
そのまま優雅に膝を折ると恭しく差し出した。
「ブレードリヒ閣下。そう私の部下に当たられては困ります。何ゆえの
鞭を絡め取られた際にミランダの胸が当たったのか、鼻の下を伸ばしてミランダを見ると、
「
と鞭を受け取った。
「貴様っ、
と見下して来やがる。
一発殴って良いだろうか?
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