第161話 神聖軍の到着

 迷宮ダンジョンの入場禁止に踏み切ったマーベルに洗浄水の拠出を求められるショーカン。頼るところは――


 お願い! 『在庫システム』ぅ――

 目の左端にカーソルが現れ現在の在庫が羅列されていく。


『皮→革製品・水・脂(油)など。

 肉→食品・調味料など

 鉄→鉄製品

 ――――』


 ヨォシ! 確か水牛の皮はあったはずだ。アレが変換できれば急場はしのげるかも知れない。


『◯水牛の皮……1▼▲ /15頭

 ◯洗浄水……あらゆる物を綺麗にしてしまう。除菌、消臭もお手のもの! お掃除するならミスト状に噴霧してゲル状に固まったものを集めてポイ! 簡単綺麗でとっても便利!


 ――

 ――――』


 なんか解説にセールストークまでついているし……。


 まぁ良いとして洗浄水は――ポチッとな!

『⚫️水牛の皮……1頭

 洗浄水……4ガロン=800リットル』


 4樽?! ボアよりずっと多いんだが?


「なぁ、水牛って買い取り価格はどれくらいになる?」


「そうさな……一頭あたり金貨20ってところだ。皮は鎧屋、靴屋、どこからでも引っ張りだこだし、肉も捨てるところなしだからな」


 それでこの変換率か――納得のプライスだな。


「マーベル、とりあえずどれくらい有ればいい?」

 

「なんでぇ、あるならあるって早く言え。そうさな……60樽ってところか」


「とりあえずって量じゃねぇだろ!」


「てめぇの顔見りゃそれくらいいけるって書いてあらぁ。それに備蓄は必要だ、なにせ……」


 と顔を険しくする。


「街中が死体まみれになるかも知れねぇしな……」

 ああ、面倒くせぇ……と忌々しげに呟いた。


 ――――組合ギルドが樽の準備ができたと連絡をくれたのはそれから一週間後。


 迷宮ダンジョンへの入場禁止が響いたのか仕事にあぶれた冒険者が組合ギルドに詰めかけている。

 やることもなかった俺は朝から裏手にある倉庫で、せっせと樽に洗浄水を詰める作業をしていた。


 レオにも日当銀貨一枚で手伝ってもらっている。仕事にあぶれた年少の冒険者くん二人にも同じ条件で雇い、せっせと詰めては蓋をして倉庫の端に運んでもらっていた。

 棚に積み上げるのは組合ギルドが雇った年配の冒険者たちだ。

 こちらも事案インシデントの影響で仕事が減っていたからちょうど良かったらしい。


 昼過ぎになって

「そろそろ飯にすっか?」

 と声をかけると「ウィッス! 親方」と体育会系のノリで返ってくる。


「なんだぃそりゃあ?」と笑っていると

 

「神聖軍が来たぞぉぉ――っ」

 と先ぶれらしい衛兵の声がした。

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