第160話 お願い! 在庫システムぅ

 マーベルは ドラゴンが出てくる予兆だと言う。


 ――――引き継ぎショーカン目線です。


ドラゴン……ってドラゴンかえ?」


「他にどのドラゴンがいるんだ?」


 マーベルと俺が小首を傾げあっていると、レオが助け船を出してくれた。


「ショーカンはニホン国から来たからこっちのドラゴンを知らないんじゃないかと……」


 もちろん映画やRPGなんかに出てくる作り物なら知ってる。だが洋の東西が違うだけでもいろんなタイプがいるじゃん。作品によってはカワイイやつとか。


「そうだったな。一応当時の証言を元に描かれたのが……」


 とファイルをペラペラめくり最後の少し厚手の紙を取り出した。


「実際はどうだかわかんねぇぞ」


 と言いながら差し出されて来た絵には。

 ティラノサウルスによく似たドラゴンが描かれていた。フォルムはティラノサウルスにそっくりだ。

 だがそれに描かれがちなゴワゴワとした肌質ではなく、鎧のような緑色の鱗にびっしりと覆われて、頭はインディアンの羽飾りのような長い羽根に覆われている。

 前脚はライオンのように逞しく、凶暴そうな鉤爪が突き出していた。

 そして何より違うのが背中から生えている巨大な羽根。ここはなぜか羽毛で覆われている。


 ファンタジーだわぁ。


「まぁ、これだって当てにならねぇ」


 なぜなら、とスキンヘッドをつるりと撫ぜて

「遭遇した奴らはみんな死んでいるもんな」

 と深いため息をついた。


「ともかく……だ。今日より迷宮ダンジョンへの入場を禁止する。代わりに第一級要請スペシャルオファーを全冒険者に出す」


第一級要請スペシャルオファーって?」


「領兵と協力して防衛線を作って罠をたんまり仕掛けるんだよ。あと領民を避難させる衛兵の手伝いだな」


 これから始まるあれやこれやに頭がいっぱいになったのか、


「ご苦労だった、もう下がっていいぞ」

 と何やら書き物を始めようとしたが、突然「あーーっ」と絶叫する。

 

「そういや洗浄水はどうなった?」


「それどころじゃないだろう? マーベルはもっと大事な仕事に精を出せよ」


「誤魔化すなっ、迷宮ダンジョンで稼げなくなる連中に、下水道の仕事で食わせねぇとならねぇんだよ」


「あー。その事なんだが……」


 実は空間収納イベントリにはレオの狩った一角兎ホーンラビットと、水牛しか入っていない。


「まさかありません、なんて言うんじゃないだろうな?」


 禿げ頭スキンヘッドに血管が浮かび上がり、首筋から伸びる炎のタトゥが真っ赤に燃え上がって見える。


 やばい……(汗) こんな時はいつものアレだ。


 お願い! 『在庫システム』ぅ――

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