第158話 竜人が運んできた厄介事

『在庫システム』をフル活用し竜人リザードマンを退けたショーカン。


 ドサリッと両断された竜人リザードマンが地に転がる。


「レオッ、大丈夫か?!」


 途中から見失っていたレオを必死で探す。

「離れろ」とは言ったが俺のメテオ・ストライク(極小)に巻き込まれた可能性もなくは無い。


「レオッ!」


 ゴソリと樹木の影の下草が動いた。


「レオ……なのか?」


 襲いかかって来た竜人リザードマンが他にも伏兵を潜ませていたかも知れない。

 もしくはレオが怪我を負って身動きが取れずにあの下草に隠れているのかも。


 前者はともかく後者なら一刻を争う。

 念の為バスターソードを収納し小回りの効く小太刀ファルシオンへ持ち替えた。


「痛ぁ……」


 聞き覚えのある声がした。


「怪我したのか? なら動くな。今、ポーション準備してやる」


 慌てて空間収納イベントリから事前に購入していたポーションを取り出す。

 

「平気だよ……あの扉が見えたからここに飛び込んだ時にちょっと打っただけだから」

 

 俺のメテオ・ストライク(極小)を前回見ていたから、中空の扉が現れた時点でこの茂みへ飛びこんだらしい。

 膝を庇いながらレオが茂みの中から現れた。


 ダブっとしたジーンズに似た冒険者用のズボンには、膝と尻にクッション入りのプロテクターが縫い付けられている。

 ちょっとくらいでは傷まないはずだから、相当強く打ちつけたに違いない。


「いいからポーション飲んどけ」

「まぁた高い奴を……」

 

 手渡すポーションの瓶の色を見て眉をひそめた。

「上級ポーションなんて大袈裟なんだって」


「そいつは骨折にも効く。靭帯がやられてるかも知んねぇだろ? いいから飲んどけ」

 と強要した。


「まぁショーカンのだから遠慮なく」

 と無遠慮な口を叩きながら飲み干し、それにしても――と転がる竜人リザードマンの亡骸を見ながら呟いた。


「素材に変わらないとこを見ると迷宮ダンジョン産の魔物じゃ無さそうだね」


「ああ……一体どこから紛れ込んだんだか」


 迷宮ダンジョンにいるはずのない竜人リザードマンが出没した異常事態だ。

 組合ギルドからは事案インシデントが発生しているから、異常を感じたら引き返すようにと通達が出ていた。


 入場制限をしないのも、日々のかてを稼がねばならない冒険者たちの懐事情をかんがみてのことだろうが、流石に今回はいけない。


「レオ、地上に戻るぞ」


 目的のボアは狩れなかったが命には変えられない。


「そだね……残念だけど」


 俺は証拠として竜人リザードマンの亡骸を空間収納イベントリにしまおうとすると、コロンッとトパーズのような宝玉のペンダントが転がり落ちてきた。


「なんだ……これ?」

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