第156話 竜人との緒戦は力技から

 第5層の森の中で狩りをするレオとショーカン。森の中の小川で竜人リザードマンと遭遇する。


竜人リザードマンがなぜここに?」

 レオがゴクリと唾を飲んだ。


「なんだその竜人リザードマンって?」


「竜の使徒とか言われてて、単体でも脅威度20なのに群れで襲ってくる。でも普通は迷宮ダンジョンじゃなくて北方の山岳地帯に住んでいるはずなんだけど……」


「なんでそんなのが第5層ここにいるんだよ?」

「そんなのわかんないよ」


「そもそも魔物なのか? 竜の人なんだろ?」

「人間を見ると襲ってくるから魔物扱いだよ。『その皮は硬く刃物を通さず、力は10人力。竜を神とあがめ水の守り部にて千変万化の技を持つ――脅威度20。近寄るべからず』って、教本に書いてあった」


「なんの?」

「冒険者教本だよ! ほんと勉強してないよね」


 おうっふ……俺の苦手分野だぜ。

 それにしても20人がかりで倒す相手が少なくとも3人はここにいる。俺が脅威度10の悪霊騎士リビングアーマーとしての力を継承していたにしても分が悪い。

 

 さて……どうしたもんか?


 なんて迷っている間に敵は近づいて来ていた。


「キュルエェェ――ッ」


 蛙のような雄叫びを上げるとこちらに駆け寄ってくる。なにせ10人力だ。

 柵防壁さくぼうへきごと吹き飛ばそうと言うのだろう。


 走り寄る足音に俺は両手で長盾の持ち手を支え、衝撃に備えて足を踏ん張った。

 ドォォォンッと盾から伝わる衝撃に思わず顔が歪む。だが奴らの狙いはそれではなかった。


 長盾を飛び越えて来た奴が一人、注意が前面に集中するのを待って回り込んできた奴が一人。

 最初に突っ込んできた奴なんか長盾のヘリに手をかけ、引き倒そうとしてやがる。


 ならば、とそのまま身を預け長盾を引き倒そうとしていた奴の上に、長盾ごとのしかかった。

 竜人は引いたところに畳一畳分ある長盾がのしかかってきたからズシーーンと地響きを立てて下敷きになる。

 跳ね除けようと暴れているが大の字に倒れ込んだところに上から鉄板だ。

 押し返すには肘なり膝を立てねば跳ね除ける力は発揮できない。


 その暴れる竜人の頭がはみ出ていたから、バスターソードを逆手に持ち直して貫いた。


 その間にも飛び越えて来た奴はレオに狙いを定めたか、手にした山刀マチエットをかざして飛び込んで来た。

 レオも反射的に槍を突き出すが、あっさり弾き返してしまう。


「きゃっ!」


 横倒しにされたレオに山刀マチエットを振り上げる竜人リザードマンへ、突き刺したバスターソードを逆手のまま振り抜く。


 キン……と火花が散った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る