第155話 第5層幻穴の竜人あらわる

 トラブルはあったものの、レオはラエルを王都の病院に診せるため、とショーカンを許すことにした。


 ――――ショーカン目線です。


 後ろからレオの声がする。

「Dランクデビュー戦だね。今回はじゃんじゃん狩るんだから」


 前回と違い、手には槍を腰には投石器を下げているから、なかなかに勇ましい。

 前回はこちらを避けて森の外周を回るコースで戻ったが、今回は目的がボア狩りなので、森の中のコースを進んでいた。


「レオ、そこっ」


 途端に投石器から石塊が飛び出し一角兎ホーンラビットを仕留めた。

 プシュ、と風船が縮むように肉と皮を残して消えていく。


「それっ」

 と声が上がるたびに一角兎ホーンラビットが跳ね上がり、素材に変わっては空間収納イベントリに収容されていく。

 なかなか腕を上げていて、師匠の俺としては嬉しい限りだ。

 俺は大物が出てこない限り手を出さない事にしている。

 

 やがて木々が開けると小川が流れていた。

 擬似太陽の木漏れ日を反射しキラキラと水面が輝いている。


「レオ、ここらで休憩するか?」

「ん……そだね。その前に」


 と河原の石を拾うと立て続けに投げ込んだ。ボチャボチャと川面が跳ねて水の色が変わる。


「何やってんの?」

「川辺にはいろんな魔物が隠れているから、用心の――」


 話が終わるより前に、バシャンッと水滴の尾を引きながら水中から“何か”が放たれた。


「危ねぇっ」


 咄嗟とっさにレオとの射線に体を差し入れ、バスターソードで叩き落とす。

 見ると短い矢だ。

 フェイスガードを下すとその矢が放たれた方に目を凝らした。


「誰だっ、出てこいっ」


 ビシャンッ、ビシャンと返事代わりの矢が飛んでくる。これも叩き落とすがキリがねぇ。


「在庫システム『ミノタウルスの盾』」


 ズッシリと手ごたえのある重さが手のひらに顕現する。持ち手だけでも俺の前腕(手首から肘まで)くらいある。


「レオっ、こっちだ」


 畳一畳分はあろうかと言うミノタウルスの長盾の底辺を地面に突き刺した。

 その陰にレオを呼び込むと内側に付いているつっかえ棒を引き出して、柵防壁さくぼうへきを作る。


 二、三回カンカンッと矢が弾かれる音がしたが、そこはミノタウルスの盾。全く揺るぐことはない。

 そぉっとその陰から顔を出して水面をうかがい見ると、ユラユラと水面が揺れて革鎧を着た二足歩行のトカゲみたいな奴が現れた。


「なんだありゃあ? ……レオ、頭を引っ込めろって」

 いつの間にかレオも首を出している。


竜人リザードマンがなんでここに?」


 レオがゴクリと唾を飲み込んだ。

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