第154話 ちょっとした喧嘩? あるいはいつものコミニケーション

 中空に『在庫システム』の扉を発生させ、次々と闇落ちを押しつぶしたショーカン。なぜかレオのご機嫌を損ねてしまう。


「あんなの魔法じゃない!」


 ――――レオ目線です。


 ショーカンが「メテオストライクっ(極小)」

 と唱えるたびに中空に現れた扉が開いて、鉄塊が闇落ちどもを押しつぶしていく。


 メテオストライク?

 ふざけんなって話だ。それになんなの? その小さく付け加えるように(極小)って呟くのは?


 メテオストライクは魔道士の中でも第8位以上の魔道士しか使えない。つまりこの世に8人しか使えない大規模魔法だ。

 それを(極小)って付け加えていたにしても、あっさり似たような現象を発揮している。


 私なんか必死に練習してても魔力を循環させるのが精一杯なのに――しかも(極小)とか……バカにしてんのかっ!


 なんだか憧れていた魔法自体をバカにされたような気がして、ショーカンが

「レオ、助かったようだぜ。下に降りよう」

 と言って来た時も、プンスコしていた。


 それでも、こんなところで怒っていても――と足場ルートを探して目を凝らしていると、ヒョイと担ぎ上げられた。

 いわゆるお姫様抱っこってやつ。


「な、何すんの?! ショーカン?」

「ん? 口を閉じて歯を食いしばっとけ」


 何を言ってるんだろう? と思ってる間に体がふぁっと浮かび上がった。

 飛び降りてる? 飛び降りてる?! ウソでしょ? 馬鹿なの!?


「うわっ」


 悲鳴をあげる間もなくズシンッと衝撃が伝わってくる。だが、次の瞬間には柔らかく足先から地面に降ろされた。


「な……何するだ……」


 もうドキドキが止まらなくて言葉が違う地方の言葉になってしまっているけど、問題はそこじゃない。


「何って……こっちの方が早いだろ?」

「はや、早いって間違って手を滑らせたら死んじゃうでしょっ」


 ショーカンは「あー」と言いながら頬をボリボリ掻いている。そして一言


「すまん」


 と、叱られた子犬みたいに小さくなって目を逸らしているし。


「もういいよっ、帰る」

「な?! 待てよっ、待ってくれよぉ」


「着いてくんな、バカっ」


「すまんっ、いやごめんなさいって。水牛の分け前やるからさ。この次の安全地帯セーフティーゾーンでステーキと菓子も出すし、そう怒んなってば」


 ん……? 菓子?


「地上に戻ってからもちゃんとおごるから……」


 おごる?


「ラエルの分も?」


「もちろんだとも」


 なら、良いかな? これもラエルを王都の病院に診せるためだ、と自分を納得させた。

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