第149話 この国の13年前にあったこと

 ショーカンは難しい顔でそっと私の手を取った。

 

「レオ……落ち着け」


 やたらと優しく微笑むからムカつく。

 

「そうじゃなくて――記憶に出てきたパパが、ルキウス・アンガディウス様だって、そう『鑑定眼真実を見通す目』が告げてて……ごめん、ショーカンはこの国の話はわからないよね?」

 

 私はこの国の13年前に起こった事件を話す事にした。

 

「今の教帝はマタイオス・アンガディウス様って話は前したよね?

 実は2人の教帝がいた時代があったんだ。

 その時代をマタイオス・ルキウス朝と呼んでるんだけど、片方のルキウス教帝が13年前に病で亡くなって、今はマタイオス教帝が単独の教帝となったの」


 ここまでは良い? と聞くと曖昧あいまいに微笑む。絶対わかってないやつだ。


「あのね。二人の権力者がいて、一人は内政、一人は軍事をしてたってわけ」


「ほぅ……なんで権力者をわざわざ二人に?」


「その前の教帝が独裁がひどくてね。

 その前の教帝が急逝きゅうせいしたあと、教会は軍事と内政に分けて、2人の皇子を教帝に立てたって聞いてる」


 しばらくショーカンは難しい顔をしていたが、

「独裁にならないように、三権分立ならぬ二権分担にしたわけね……ローマ時代でもあったか?」

 とブツブツ言いながらも飲み込んでくれた。


「そのうちの軍事を担当していたルキウス・アンガディウス様は軍事侵攻を退けたあと、大変な人気だったの。それがいきなり食中毒でお亡くなりになって――」


「毒殺されたってわけか?」


「滅多な事言わないでよ。こんな話、他の人に聞かれたら間違いなく不敬罪になるんだから」


「まぁ、権力闘争ではよくある話だな。危なすぎるから知らないふりをするよ」


「そのルキウス様の遺児がレオナ・アンガディウス様――なんだけど、神官にお成りになられて、今では教会の顔と言っても良いくらいの人気よ」


「それとレオがなんの関係がある?」


「鑑定した記憶ではそのレオナ様は別人で、私がレオナって言う……馬鹿げているよね、ははは……はぁ」

 話しててため息しか出てこない。

 絶対あり得ない話が真実なんだって『鑑定眼真実を見通す目』が告げるから、混乱しない方がどうかしている――って言うのにさ。


「なぁレオ、俺にとっちゃ、レオが王様の落胤とかどうでもいいんだよ。どんなに馬鹿げていようが、レオがそう言うなら俺は信じる。

 使命があるって言うなら手助けする。俺はそのためにここへ送られてきたんだよ、きっと」


 なんてショーカンが言うから不覚にも目が潤んでしまった。

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