第147話 ひょっとしたら私レオじゃないかも知れない

 レオの封印された記憶が蘇りフィロソフォス知恵を愛する者・タレスの授けた使命に戸惑うレオ。


 ――――引き継ぎレオ目線です。


「どうした?」

 ショーカンが台所キッチンから顔を出す。


「なんでもない……いや、後で聞いて欲しいかな?」


 混乱してて今は上手く話せそうにない。

「そっか?」

 と肩をすくめ台所キッチンへ戻って行った。

 美味しそうな匂いが漂って来てグゥッとお腹の虫が鳴り、自分が空腹なのに気づいた。


「さぁ、たっぷりあるから遠慮なく食え」


 テーブルクロスを敷いて深皿に注いでくれたのは真っ白いスープ。

 中に野菜がゴロゴロ入ってて、茶色い肉にとろみのついたスープがまとわりつき湯気を立てている。

 空間収納イベントリから木の深皿を取り出すと、拳大のクロワッサンとバケットを二、三センチに切り分けた物を乗せていく。


「バターがいるか? ジャムもあるぞ?」


 びん詰めを取り出しては紙を敷いた上に、先端の丸くなったバターナイフを2本並べた。

 皿の両脇にはナイフとフォークを並べていく。

 こうすると高級な感じに見えるのは不思議だ。


「ショーカンってさぁ……無駄にオシャレだよね?」


「なんだよそれ? 俺としては精一杯もてなしているつもりだぜ? 無理言って着いてきてもらったんだからな」


「ふーん、気を使ってくれてんだ」


「当たり前だろ? まぁ食えって、冷めたら味の保証はしねぇ」


 それそれっ、と急かすから白いスープを掬うと口に入れる。


美っ味うっま?!」

 

「だろ? パンも食ってみろ」


 クロワッサンを一口大にちぎろうとするが、生地が上等なのか柔らかく伸びて指にまとわりつく。

 プチンとちぎれた欠片を口に入れるとバターと甘い香りが広がった。


「これも……美味しい?!」


「そうだろう? 評判の店で特別にバターとシナモンを混ぜ込んでもらったんだ。1個で大銅貨一枚千円取られたぜ」


 美味そうに食べる私をホクホクとした顔でしばらく眺めていたが

「ところで……なんだ。さっき聞いて欲しいような話があったんじゃないのか?」

 と聞いてくる。


「うん……」

 と言い淀んでいたら

「あ、飯食ってからにするか? 俺も腹減ってたんだ」

 と気を遣ってスープを食べ始めた。

 

 パンをちぎっては

「美味いな?! これ。な? レオもそう思うだろ?」

 とやかましく話しかけてくる。


 ――やがて食事も終わり後片付けを済ますと。

 

 やっとショーカンに話す覚悟を決めた。

 

「あのね……ひょっとしたら私。レオじゃないかも知れない」

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