第141話 マーベルの思いやり
社畜の習い性で
なぜだ?
「なぁ、俺が奢ってもらう流れじゃなかったのか? んで、マーベルさんよ。何でまだ飲んでやがる?」
マーベルは
きっとお金持ちだ。そして俺は
なのに今、俺が全員分の支払いをしている。
金貨3枚と大銀貨2枚……とほほだよ。
下水道清掃で色々差し引いて金貨153枚もらったけどさ。
それもひと月休みなしで働いてもらった金だ。
「細けぇこと言うな。休憩中だ」
スキンヘッドの首筋から後頭部にかけて炎の入れ墨をしているおっさんが、ギロリと睨むとジョッキを傾けてエールを飲み干した。
「休憩って朝からずっと飲んでるじゃねぇか? 俺の金で」
「お前にも儲けさせてやっただろ? その駄賃だ、ケチケチすんな」
ゲェフッとゲップをしてやがる。
何なんだよ、このおっさんはよ? はぁとため息をついて諦めた。
うん、今日はこんな日だ。
懐は暖かいから俺も飲んじまおう――と残りのエールを傾けた。
女将は別に書き付けを起こして『追加でもらうわよ?』と伝票バインダーを振ってる。
「女将、エールを二つ追加だ。ポテトがあるか? ああ、持って来てくれ」
マーベルがツマミまで頼んでやがるから呆れてテーブルをどついた。
「何のつもりだって言ってんの」
と
「あのな……。アイツらが洗浄水を使う、
あ……そっか。結果的にはプラス?
でも、俺の後もたくさん応募した冒険者がいたんじゃなかったか?
「あの後、追加がおしよせてきたんだよぉ。120件もだ、誰かさんがやりすぎたせいで――」
とジロリと睨む。
「全っ然、追いつかねぇ。かと言って
と俺を顎でしゃくり
「
細い眉毛を持ち上げて
「普通、10年かかるDランク昇格を加入ひと月だ。昇格の条件は公平、それでも人間は感情が先に立つ」
エールを飲み干すとバリバリポテトを頬張りながら
「だから先輩冒険者に『お近づきに一杯』って慣習があるんだよ。『
とまたエールを飲み干す。
「まぁ、勉強料と思え。明日から洗浄水を卸せよ」
と金貨を3枚置いて出て行った。
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