第138話 揺れる想い

 レオは受け付け嬢のリサからショーカンの恋人関係を尋ねられ、浮かれるショーカンに蹴りを放ち立ち去ってしまう。


 ――――レオ目線です。


「何だってのさ……」

 階段を登りながらぶつぶつ言っている。

 何で自分が不愉快なのがわからない、いや、わかっているけど浮かれるショーカンが許せない……気がする。


 なんとなくショーカンはずっと自分の側にいて、自分を気遣ってくれる存在って思っていた。

 魔法絆バイパスが繋がってからは、親子のような兄弟のような他人ではなく心が繋がった存在と感じていたから、なんか裏切られた気分だ。


「鼻の下を伸ばしちゃってさ……」


 あれはシャワーを浴びて組合ギルドのいつもの待ち合わせのロビーにいた時、受け付け嬢のリサさんが話しかけてきた。


「ショーカンさんなら組合長ギルドマスターに呼ばれて二階うえに言ったわよ。貴方も連れて来てって彼からも……」


 とリサさんはそこまで話すと、チョイチョイと手招きして耳元に口を寄せ小声で聞いて来た。

「彼って結婚してるの? それとも彼女さんがいるとか?」


 驚いて見返すと

「まさかレオちゃんが恋人とか?」

 何で聞いてくるから全力で首を振る。


「ああ、なら良かった。ショーカンってね、受け付け嬢の中では人気高いのよ。

 あのビルに『なら話は早ぇや。もう貴様は貴族じゃねぇ』って啖呵たんか切ってたでしょう? 腕っぷしは強いし仕稼ぎは良いし……」

 ときゃいきゃい語るのをジト目で見ていると、コホンっと咳払いして取り次ぎに先導してくれた。

 

「だからなんだってのさ」

 

 ぶつぶつ言いながら部屋のドアを開けると、家政婦さんからの置き手紙とその隣にラエルからの手紙が置いてあった。

 

 家政婦さんからはラエルが熱を出したこと。それでも私の言いつけを守って、頑張って完食したことなどが書かれていた。


 ラエルからは、

『お姉、頑張ってるから、ラエルも頑張ったよ、ゆっくり休んでね』とグニャグニャした文字でつずられている。


 ああ……私にはこんなに大事な弟がいるのに、早く王都の病院で診せてあげたいのに、何をやってるんだろう。


 家政婦さんが作ってくれた夕食に、かけてあった布巾をめくるとオムライスにグチャっとしたハートが描かれている。

 きっとこれもラエルがお手伝いして描いたに違いない。


「ラエル、お姉は頑張るからね」


 と呟いていると、となりのドアが閉まる音がする。

 私は「いーだ」と歯を剥き出してやった。

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