第136話 これって異世界サブスク?

 洗浄水を使ってゴミ捨て場を綺麗にして見せたショーカン。洗浄水をマーベルに売り込んでいる。


「振り撒いて汚れが浮き立ったところを水で流せば、一般の冒険者でも綺麗にできる。洗浄水一樽あれば200メートル区間は綺麗にできるだろう」


 うぅむ、とマーベルは唸りながら頭の中で算盤そろばんを弾いてるようだ。

 もっともボア1匹使って変換したから、原価はボアの買い取り価格の大銀貨5枚(日本円だと50,000円)くらい。それを変換して一バレル(1バレル=200リットル)になる。


「いくらだ?」

 と探るような目線でマーベルが聞いて来た。


「1樽あたり金貨2枚だ(日本円で20万円くらい)」

 

 別に吹っかけているわけじゃない。

 原材料のボアはもう無いから、また迷宮ダンジョンに潜って素材集めをする手間賃も入っている。


「一区間で40世帯、1世帯あたり大銀貨4枚で金貨160枚――洗浄水を冒険者に金貨4枚で販売しても、4人1チームにバックするのが金貨5枚と大銀貨6枚か。

 一人頭金貨1枚と大銀貨4枚――ポイントを少しあげてやれば食いつくな……」


「これがあれば1日で一区間は完了するだろう。これまで7日はかかってたんじゃないのか?」


 これまで塩漬け依頼だったのは汚物を扱う忌避感と、かかる期間の割に報酬が見合わないせいだ。

 それが俺が1日二カ所も完了させて、ひと月の報酬が二人で金貨576枚にもなっている。


「その秘密のネタが手に入るとなりゃ、組合ギルドは金貨6枚だって食いつくはずだ。それを今回、金貨2枚にしてやるってんだ――何を迷う理由がある?」


 と他の要因を探りにかかるがマーベルはとっくに算段がついていたようだ。


「悪くねぇ……乗った!」


 こう言う思い切りの良いところも黒字組合ギルドの理由なんだろう。

 

 レオが口をポカンと開けて

「金貨576枚……? 金貨が576枚?!」

 と今更ながら驚いているのに笑ってしまう。


「ああ、三分の一はパーティーの積み立てにして、あとは折半せっぱんにしよう」

 と持ちかけると

「だ、ダメだって! 洗浄水を出したのも作業したのもショーカンなんだから私は手間賃だけで良いよ」

 と慌てて遠慮してくる。


「いいからって。俺はこれから洗浄水の販売で儲けさせてもらうから、貰っとけ」

 って言うのに頑として受け付けない。


 それならと手間賃ということで積み立てを除いて8:2で落ち着いてくれたが、それでも金貨69枚になるのはわかってるんだろうか?

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