第135話 下水はビジネスになるんですね
「希望者はいる。あとはノウハウを教えろ」
そう言ってマーベルはじっと俺を見つめた。
希望者はいる、希望者はいる……なんて素敵な言葉なんだろう。ガラ〜ン、ガラ〜んと歓喜の鐘が脳内で響き渡る。
「もちろ……「ダメだよショーカン」」
「へ?」
「
と俺を見る。
「技術はもしもの時のために取っておくべきだよ」
冒険者稼業はヤクザな世界だ。
いつ怪我をしてまともに動けなくなるかわからない。その時の働き口のために特殊なノウハウは秘匿すべきだ、と言いたいのだろう。
マーベルはふぅと息を吐くと
「こすっ辛いこと言うなよ、レオ。これでも俺は、お前たちのためにずいぶん骨を折ってやったんだぜ?」
やれやれ情け無い奴らだよ、と手のひらで顔を覆った。
「なにが悪いの? 自分の身は自分で守るしかないんだもの」
レオの考えはわかる。だがそれでは情義にもとる。
「マーベルさん、生ゴミが置いてあるところとかないか?」
「ショーカン?!」
レオが不満そうな顔をするがまぁまぁ、と
「世話になった借りを返すと思えば安いもんだ。生ゴミで実演して見せる、案内してくれ」
そう言うとマーベルは嬉々として手元のベルを降り、部下を呼び出した。
――――ゴミ捨て場に連れてこられて。
金属製の蓋を
あたりはすっかり日が暮れて、カンテラの灯りが反射するヌメヌメと蠢く生き物を照らしていた。
「スライムだよ、あれで分解したものを汲み取って下水道に流すんだ」
とレオが説明してくれる。
それでも分解しきれないカスが混ざってあんなになるのね。
「今からやる事は特殊すぎて役に立たねぇかも知れねぇんだが良いか?」
とマーベルに一応確認する。
「ああ、構わないから早くやれ」
「それじゃ……洗浄水噴射!」
たちまち
「お前、洗浄魔法が使えたのか?」
なにそれ?
「いや洗浄水を
「それを洗浄魔法って言うんだよ」
とマーベルに叩かれる。
なるほど。側から見ればそうなるわけね。
「その魔法の元の洗浄水を譲ってやるよ。いくらで買う?」
マーベルに散々やられたビジネスって物をやろうじゃないかね。
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