第132話 クソったれの独り言

 結局、俺とレオが仕事を請け負う事になりそうだ。

「私はミランダさんの弟子のつもり。一緒に動けるようになっていなきゃスタートも切れないもの」

 とまっすぐに見返してくる。


 俺氏。嫌すぎて泣きそうなんですが。


 マーベルは悪魔の笑顔を浮かべて

「よぉし、ビジネス成立だ。お前らは実績を手に入れ、晴れてミランダとパーティーを組める。文句を言う奴らはみんな下水道清掃を受けてもらい、組合ギルドは塩漬け依頼を処理できるってわけだ」

 と大袈裟に両手を広げた。


 なんか手のひらで踊らされてる気がする。


「おい、マーベル。本当にこれを全部こなしたら誰にも文句を言わせねぇってんだな?」


 ジャパニーズの習性で風当たりが強くなるのが嫌で受ける仕事だ。念押ししとかなきゃ割があわねぇ。


「もちろんだとも。仕事に旨みがあると分かれば、敬遠してる連中も我先にやってくるだろうし苦労が分かれば、文句も言えなくなる。それでも行ってくる奴がいたら、こう言ってやれば良い――『クソ喰らえ』ってな」


 あっはっは――っと自分で大ウケしてやがる。

 

「下水道だけに――か?」


 クソったれが。



 ――――その翌日。


 晴れやかな旅装で王都へ向かうミランダを見送り組合ギルドで作業着へ着替えて、外気を送り込む手押しポンプを載せた台車を押しながら現場へ向かう。


 ちなみにラエルは家政婦を雇って面倒を見てもらっている。


「ねぇ、ほんとに私はこのポンプ係で良いの?」


 台車を押しながら気が咎めているような口ぶりだ。


「あんなもの女の子にはさせられないさ。それにミランダさんから課題を言われただろ? 身体強化しながら作業するってヤツ」


 身体強化は魔法の基礎らしい。

 体の中に魔力を循環させ身体能力をアップする方が術式も簡単で、外界へ影響を及ぼす魔法に比べて感覚として分かりやすく、効果も出やすいんだそうだ。


「お、女の子って……」


「いや、違うな。適材適所ってやつさ。気にすんなって」


 やばかった。こんなのもセクハラになるんだろうか? この世界では。


 ――――で、作業を始めて3日目。


 いつものように高圧洗浄で洗浄水を吹きつけて洗い流していると。


 単純作業に頭がボォっとしてきて、流れ落ちる茶色い汚水をぼんやり眺めているうちに閃いた。

 

 まとめて根こそぎ分解してしまった方が早くね?

 ちょっと試してみましょうかね?

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