第129話 幕引きとやり過ぎ

 ショーカンが植え付けたトラウマに、ビルは父アルツール・スメルゲイド男爵の前で自らの罪を白状してしまう。

 醜聞スキャンダルを恐れたアルツールによって、彼は追放された。

 

 ――――ショーカン目線に戻ります。


「ひぃぃぃぃぃ――っ」


 とビルが悲鳴を上げて逃げ去り、遠ざかる足音を聞きながらホッと息をつく。


 このまま報告に帰るべきか、とも思ったが足元を見ると妙に綺麗になっている。


「ん? これは……洗浄水の効果?」


 気持ち悪いヌメリも苔みたいなのも綺麗に落ちている。それどころか気色悪い泡を立てていた下水も、汚れがゲル状に固まって流れ去っていき透き通ってきた気がする。


 とはいえこのまま全身鎧フルプレートアーマーが汚れるのは嫌なので、再び作業服へと変換した。


「は?! こ、これはもはや変身っなのでわ?!」


 と盛り上がったが所詮ここは下水道。何やってんだろ? 俺氏――と、再び足元を見る。

 

 綺麗になった一部と汚れまくっているその他を眺めていると、俺の中の妙な虫が騒ぎ始めた。


 お風呂掃除ってやり始めると止まらなくね?

 始めるまでは濡れて嫌、とか頑固な汚れが気持ち悪いって思うけど、さっぱりと綺麗になった時の満足感は清々しいというか……。


「ざっとここらを綺麗にしてから帰るか」


 独りごちで『在庫システム』オープン!

 洗浄水がまだたんまりある事を確認すると、高圧洗浄をセットした。


 ――――その3日後。


 マーベル組合長ギルドマスターから呼び出しを受けて、俺、レオ、ミランダは執務室にいる。


 マーベルは俺たちを前に(本人はその気はないらしいが)に厳つい顔で重々しく口を開いた。


「ビルの件で報告がある。これから話す事は貴族絡みだから内緒にして欲しい――良いか?」

 と前置きをしてくる。

 内容もわからないから流れで頷く。


「ビルはスメルゲイド家を追放処分になった。今後は他の組合ギルドへ移籍し、活動するって事だ。レオ君への慰謝料は組合ギルド経由で振り込まれてくるから、そこは問題ない」


 心配するな、と目で告げる。


「領主アルツール男爵もこれで幕引きを測りたいそうだ。レオ君、これで良いかな?」


 レオは一も二もなく頷き、面倒ごとが早々に片付いて喜んでいるようだ。

 マーベルもホッとした顔をしてたが、俺を見るなり怪訝けげんな顔へ変わる。


 ――なんでだよ?


「ショーカン、お前下水道で何やった? 商会から下水道を清掃してくれってこんなに依頼が来てるぞ?」


 ドサリと書類の束が置かれた。

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