第126話 ザマァねぇな?

「汚ねぇモノは洗わないとなぁ、洗浄水噴射っ」


 指先がモゾモゾして洗浄水が圧力を高めていく。

 そう、まるでCMで見た高圧洗浄機みたいに大量の洗浄水が吹き出した。


「や、やめろっ、んばはぁ――っ」


 こんな腐ったやつはしっかりと洗ってやんなきゃね。

 ちなみにこの洗浄水は『在庫システム』でボアと交換したやつだ。

 結構高値がつくボアだったらしく、3000リットル入っている。


「馬鹿っ、やめ、やめて、んばぁ、んごっ」


 身体中の穴という穴から水洗いされたせいかひどく咳き込み始めた。

 そこで一旦放水を止める。

 濡れ鼠になったビルは腕を抱えて震えていた。

 

「き、貴様、貴族の血族にこんなことをして、た、ただで済むと思っているのか?」


 カチンッと来た。

「二言目には貴族、貴族と持ち出しやがって。貴族はてめぇの親父でお前は違うだろ?」


 と、言うわけで高圧洗浄セット。

「汚れた心までしっかりと洗ってやんよ」


 指先をそちらに向けると

「やめろぉ――っ」

 と絶叫するから思い切り噴射してやった。


 水圧に負けて転がるビル。

 あらやだ、なんか楽しくなって来ちゃった。


「ほらほら〜、キレイキレイでちゅねぇ」


 ゴミを水圧で側溝に流し込むように押しやっていく。


「やめて、やめてください」

 悲鳴が懇願こんがんにかわる。


「おい、そうやってレオは懇願こんがんしたんだろ? お前はそのレオに何をした? 犯そうとした挙句、盗みをでっち上げて殺そうとしたんだろうがっ」


 再び洗浄水を噴射すると、その水圧に立ち上がることも叶わずズルズルと人道を滑っていき、ぐったりとし身を横たえた。


 そこでまた噴射を止めると、四つん這いになりゲホッ、ガハッ、とよだれと鼻水を垂れ流し震えている。


「殺しに来たんなら殺られても文句は言えねぇよな――」


 コツンコツンと足音を響かせてビルに近づいて行く。

 

「ここなら誰も見ちゃいねえ、そう思ったんだろ? 殺しても足はつかねぇってな」

 じっとのぞきこんでやるとおびえて目をらす。


「どうする? 誰も見ちゃいねえし、お前の声も誰にも届かねぇ」


 ガクガクと身を震わせて股間を濡らしてやがる。


「そんな所にお前はレオを置き去りにしたんだよ」


「ひぃぃぃぃぃ――っ」


 ビルは脱兎だっとごとく駆け出した。その後ろ姿にしっかり釘を刺してやる。


「今度レオになんかしてみろっ、次は川に浮かべてやんぞ」


 それに返事はなく「ひぃぃぃぃぃ」と裏返ったビルの悲鳴だけが残った。

 

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