第120話 語るに落ちる
「こいつはレオの保護者だ。損得で言えばこっちがお得なんだよ。ちなみにお前が手配した暗殺者を刈り取ったのも彼だ」
そこまで煽られるとビルの血相が変わった。
「お前が邪魔したのかっ!?」
ビルは射殺さんばかりに睨んでる。
「ほぅ……?」
マーベルは俺に回した腕をゆっくり外すと、
「邪魔をした? いま邪魔をしたって言ったな――お前が暗殺者を手配したんだな?」
とニヤリと笑った。
激昂していたビルもそこで失言に気付いたようだ。
「いや、これは言葉のアヤってもんだ。そうなれば良いと思っていたのを邪魔されたっていうか――」
マーベルはその言い訳を許さなかった。
「黙れっ。貴様の
その場に集まってきた冒険者の野次馬どもにも聞こえるように声を張り上げる。
「皆んなも聞いた通りだ。ビルは訴訟相手の組合員を暗殺しようとした、それが降格の理由だ。他にこの件に関して不満があるヤツはいるか?」
と睨み回すが、誰一人目を合わそうとしない。
『共助の情け』を破ったばかりか暗殺者を雇うなぞ、冒険者たちにとって唾棄すべき行為だからだろう。
ビルは唇を噛み締め肩を震わせている。
納得できない――それは俺も同じだ。
「意義あり!」
昔のドラマで見たセリフが口を着いて出ていた。
「肝心なことがあるだろうがよ」
なんだよ、せっかくまとめたのに――とマーベルが顔を
「まだレオに謝ってないだろ? ごめんなさいの一言があって然るべきだろ」
大人が解決した、とすれば子供は納得するしかない。だから心の傷は残ってしまう。
本人の心の踏ん切り、決着したとする区切りをつけるべきなんだ。
「民を守るのが貴族の……あれなんつったっけ?」
後ろから着いてきたミランダを振り返る。
「ノブレス・オブリージュのこと?」
「そう、それだ。守るべき民を傷つけたんだ、貴族としてすまなかったの一言あっても良いだろ?」
そうだよな? と周りを見回すが一様に困惑顔をしている。間違ってたか?
「貴族が平民に謝るってことはないのよ」
ミランダがこっそり教えてくれる。
なん……だと?
悪いことをしたらごめんなさいは世界共通じゃないのか? 貴族なら何をしても良いってわけか?
「そんな意味じゃなくて、そもそも貴族はそんなことをしないって神様と契約してることになってるのよ」
なん……だと?
「なら話は早ぇや。もう貴様は貴族じゃねぇ」
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