第119話 マーベルの誘導
「出てこいっマーベルっ」
気狂いした男の声が階下から響いてくる。
俺とマーベルは視線を交わすと息を合わせたように、立ち上がった。
――――ショーカン目線です。
「なんぞ用か? ビル」
階段から降りながらドスの効いたマーベルの声がその男に届くと、わずかに怯んだ気がした。
「ビルだ? ビル様だろぉが、このど平民がっ」
泡を飛ばして
どうやらコイツがレオを酷い目に合わせたビル・スメルゲイドらしい。
色白な肌を真っ赤に紅潮させている。
神経質そうな細い体、細い眉毛にピンと尖った鼻、薄い唇が
マーベルが鼻でふんっと笑った。
「呼び出した時には出てこないが、呼んでもいない時には出向いてくる。一体何の用だ?」
「な、納得いかねぇってんだよっ」
ビルはその煽りに口角泡を飛ばす。
「そもそも何の証拠がある?
オレが降格するほどの
マーベルはウンザリしたように首を振った。
「証拠なんざ必要ないんだよ。『共助の情け』を破っているのは確かだろ? それに被害者の訴えに間違いはない、とテメエのパーティーメンバーから証言はあった」
初耳だったらしく、アイツらが……? としばらく固まっていた。
ざけんな、ざけんな、と独り言を繰り返していたがこちらを睨み返す。
「は? そんなの嘘だね。アイツらがそんな事言うわけない」
何を見えすいた――と言い返そうと前かがりになるビルに、マーベルは軽く肩をすくめると
「正直に話せば降格査定を見逃してやる、と言ったら素直に吐きやがったが?」
と煽りに煽った。
「どのみち聞き取りにも応じず、勧告も無視したお前には意義を申し立てる権利はない」
とバッサリ切って捨てた。
「何でだよ? オレの言うことを聞いておけば貴族からの横車にも煩わされなくて良いぜ? あんな小娘に味方して
どうやら路線を変えて来たようだ。
ふぅむ……と首を傾げたマーベルは、俺をちょいちょいと手招きした。
甘いねぇ、と肩を組んで俺を指差す。
「こいつはレオの保護者だ。損得で言えばこっちがお得なんだよ。ちなみにお前が手配した暗殺者を刈り取ったのも彼だ」
そこまで煽られるとビルの血相が変わった。
「お前が邪魔したのか!?」
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