第117話 罪と罰

 ミランダが組合ギルドを訪ねた時には、すでに組合長ギルドマスターのマーベルはビルの外堀を埋めていた。

 

「暗殺者組合ギルドにもなしをつけてくる。逃げ得はさせねぇよ」


 ――――ショーカン目線に戻ります。


 新しい保護施設へ引っ越しを済ませ、ミランダから組合ギルドの対応を聞き終えると、俺はふぃーっと吐息を吐き出した。


「つまり組合ギルドは組合員の質と数に左右されるから、円滑に回すために保護したり仲裁してくれるしってわけだよな?」


 そうよ? とミランダ。

 

「じゃあそれを盾に、ビルが最後まで聞き取りに応じなかったらどうなる?」


 ビルだって冒険者だ。

 まして領主の息子だからレオに泣き寝入りさせて幕引きにするんじゃないだろうか?


「冒険者はね、登録の時点で売買契約を交わすの。

 その中に要請には応じる義務ってあるから、応じなければ罰則ペナルティを課されるわ」


罰則ペナルティって?」

 

「ランク査定の見直しとか、買い取り価格のバック率を下げる、とかね」


「なんでぇ、そんなもんかよ」


「査定を下げられるのは冒険者にとっては痛いのよ。

 せっかくDランクにまで上がったのに、またEランクに落ちるかも知れないんだもの」


 ミランダが言うには冒険者のランクとは、これまでの納品金額と年間の実績ポイントに合わせて変動するそうだ。


 高ランクになるほど報酬の単価もあがる。

 だからビルは昇格ランクアップポイント欲しさに迷宮踏破ダンジョンアタックに望んだのだが、要請を断ればポイントの査定を下げられて年間ポイントすら維持できなくなり、降格してしまう。



「貴方たちは納品金額だけなら一回でCランクを超えちゃったけどね」

 とミランダは笑った。


 そんな時に冒険者組合ギルドから出頭するよう連絡が入った。

 


 ――――マーベル組合長ギルドマスターの執務室にて。


「ビルへの処置が決まった――Eランクへの降格だ。

 それに向こう1年間、報酬の3割を差し引いてレオ君の口座へ振り込む。それで良いか?」


 と書面を推しやってくる。


「同じ書面をビルにも送ってある。もちろん罰金をレオ君の口座へ振り込むことは伏せてあるから、安心して欲しい」


 思ったよりビルに厳しい内容。なぜここまでこっち寄り? と目線を向けると


「聞き取り要請も受けず勧告も無視しやがった。レオ君の言い分を全面的に認めたとみなすぞ、とまで盛り込んだのにな。

 今のところこれ以上、罰則は課せられない……不満はあるだろうがレオ君、これで呑んでもらえんか?」


 とレオを見やった時。


「きゃー」

 と階下から悲鳴が巻き起こった。

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