第111話 リビングアーマーは救命士

『在庫システム、バスターソード顕現』

 

 念じた獲物は俺の手に顕現し、そのまま突っ込んできた黒ずくめ二号を貫いた。


「く……き、貴様……」


 と俺の肩に手を伸ばしそこで息絶えた。

 そのまま引きずられるように俺も一緒に倒れ込む。


「ショ、ショーカン」

 と半身を起こしたレオを手で制し半鐘を指差した。

「半鐘を鳴らしてくれ」

 とだけ告げてヨロヨロと立ち上がる。

 息絶えた黒ずくめ野郎二号に近づくと足で転がし、仰向けにすると踏みつけてバスターソードを引き抜いた。


 肩で息をしながら「大丈夫か?」とレオに聞くと、カンカンと半鐘を鳴らしていたレオがラエルへ近すぎ、気を失っているラエルの頬を軽く叩いた。


「……ラエル? ラエル!?」


 見るとラエルは口から泡を吹いていた。


「ラエル?! ラエルッ」

 

 半狂乱になってラエルの頬を叩いている。


 マジかよ――呼吸しているか胸の動きを観るがダラリとしたままで動かない。

 まずい心筋性ショック……心臓麻痺だ。

 さっきの『雷撃スタン』で心臓が止まってしまったらしい。


 迅速に心臓に刺激を与えなければ脳への血流が止まり死んでしまう。


「退け、俺がやる」


 取り乱すレオを退かすと手甲ガントレットを外し、シャツを手繰り上げ胸の中央の胸骨を両手のひらで押す。


 胸部突き胸パンや胸部蹴りは試合で普通にやる技で、俺の時代にはまれに心臓が止まる選手がいたから(今は試合前に健診チェックされるからまずない)連盟の主催で緊急措置の講習を受けていたのが役に立った。


 確か小児は両手または片手で傷病者の胸の厚さの約1/3沈み込む程度に100~120回/分の速さで圧迫する。AEDがあれば適切な処置ができるのだが無いものは仕方ない。


「ラエル?! ラエルッ」


 泣き叫び取り下がるレオを膝で押しのけ半鐘を指差す。


「泣く暇があれば半鐘を鳴らせ、魔道士が来るはずだ」


 と叱咤した。


 やがてドヤドヤと人の気配が近づいて来た。

 その間にもラエルは口から泡を吹きながら痙攣している。


「「ラエルッ、ラエル!」」

「起きろぉ!」


 俺とレオの絶叫が真っ暗な保護施設に木霊した。


「レオちゃん、ショーカンッ大丈夫?!」


 耳慣れた叫びが聞こえた。駆け込んできた黒ローブの人影はミランダに違いない。

「退いてっ、再生リサクション!」


 と唱えると金箔が降り注いでくる。

 それでも息を吹き返さないラエルを観て『在庫システム起動』をした。


 何かないか?!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る