第105話 手練れの侵入者がやたらと強いんだが?
戸締りをしランプを片手に屋内を巡回する。
賊が狙って来るならおそらく今夜――戸締りを確認しながら神経を研ぎ澄ませていると、カタンッと物音がした。
その音がした方へランプの灯りを向けながら
裏口の鍵がいつの間にか開いている。その足元を照らすとわずかに土埃がついている。
すでに侵入された? とすれば恐ろしい手練れだ。音のあったあたりをじっくりと観察しさらにあたりを照らしてみる。
木の取っ手のついた買い物袋が落ちていた。
これは買い物帰りに納戸の内側に引っ掛けていたはずだ。それがなぜここに落ちている?
この避難所の間取りは正面玄関を入ると、すぐにリビングと応接間になる。その奥が台所でその脇に今の勝手口がある。
勝手口は台所とその奥の収納庫、リビングにまで扉を隔てて繋がっている。
二階への階段はリビングしかない。
つまり侵入犯は巡回する俺に気づかれることなく、勝手口から侵入し収納庫へ潜んだ。そしてそこにぶら下げてある買い物袋を使ってもの音を立てて俺を誘き寄せた。
そこで観察している隙に――どこへ向かう?
「レオッ、侵入者だ」
在らん限りの声を張り上げてリビングへ向かい、二階へと続く階段を二つ飛ばしに駆け上がると、黒い上下の男がこちらへ振り返った。
手には鍋を持っている。
それをまるでブーメランのように放ると、左手のランプに当たり取り落とした。
いきなりあたりは闇に包まれる。
あの鍋も台所にあったものだ。かつて読んだ漫画で手近にある物を暗器として使う暗殺者がいた。
遺留品は全てそこら辺にあるものだったため、一切証拠を残さず捕まることはなかった――を、思い出した。
それは相当な体術の遣い手だったから、こいつもそうに違いない。
「レオッ、灯りだ、灯をつけろっ」
言うが早いか注意を引くためにソイツに斬りつけた。
黒ずくめはふわりと飛び退いたかと思うとクルリと反転し、レオたちのいる寝室に走り出した。
やばい、やばいぞ――人質を取られちゃ、対処法を一般サラリーマンだった俺が知るはずがない。
慌てて追いかけるがヤツが右にずれたかと思うと、脇腹を強烈に蹴り上げられた。
「ぬ?!」
反射的に右肘でブロックしていたから骨折は免れたが、
やだよ。やたら強ぇよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます