第104話 迎撃準備は食後で

「うんまぁ!? 料理うまいんだなレオ」

 昼飯を食べながら驚いたよ。


「へへん、だ。私だって本気出せばショーカンなんて目じゃないんだから」

 と胸を張るレオ。


「お姉の料理、みんな美味しいんだから」

 と我がことのように胸をそっくり返すラエル。


 巡回から戻ると待ちかねたようにラエルが食卓へ案内してくれた。

 そこに待っていたのは湯気を上げる具材ゴロゴロのスープと、ナンのようなパン。

 彩り鮮やかなサラダにデザートのパイだった。


「奮発したんだな?」

 

「食材はショーカンが出してくれたし、今日は特別な日でもあるからね」


「特別な日?」

「安息日だよ。『太陽神の女神アウーラ』に日々無事の感謝と祈りを捧げる日なんだ」


 レオの話を引き継ぐようにラエルも

「ーーーなんだよ……?」

 と語尾が疑問形になりながら教えてくれる。


「この日は仕事も午前中で終わり。

あとは家族と共に『太陽神の女神アウーラ』へ食事と感謝を捧げて、捧げ物を頂く日なんだ」


 レオの言葉に、さっきの不審者が今日を狙って現れた意味を悟った。


「レオ、あのな……」

 とラエルをチラ見してからゲフンゲフンと咳払いをする。


 言外の意味を汲んだらしいレオは

「ラエル、食器の片付けをしといで」とラエルに言いつけた。


「なんだよお姉、ショーカンと内緒の話?」

 と、空気を察して唇を尖らすが

「言う通りにして」

 とのレオの圧に負けて、はぁいと気抜けた返事で食器を回収していく。


「後で教えてね」

 と食器をお盆に満載にしながらレオに囁いている。

 

 さとい子だ――だからこそ感づかれたくなかった。


「なんでも大人の真似をしたがる年頃なのよ」

 と苦笑いするが、真顔の俺に表情を硬くする。


「何かあったの?」


「見張られてた。少なくとも三人はいた」

 と小声で報告をあげる。

 驚きに目を見張るレオにラエルの消えた台所を小さく指差し、ひっそりと頷いて見せる。


「まだ疑わしいだけだからラエルが寝入ってから話す。それまで俺は警戒を続ける」

 と小声で告げた。


 ――――とっぷりと夜は更けて。

 

 レオと二人交代で不寝番をしている。

 夕食の後レオと当番を決めて二交代で警戒することにした。

 屋内戦を想定してまだ組合ギルドに卸していない一角兎ホーンラビット5匹を、在庫システムで小太刀二振りと交換してある。

 

 戸締りをしランプを片手に屋内を巡回する。

 賊が狙って来るならおそらく今夜――戸締りを確認しながら神経を研ぎ澄ませていると、カタンッと物音がした。

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