第101話 ビルはなぜレオを置き去りにしたのか?
女性職員がお茶を乗せたお盆を手に近づいて来た。マーベルの耳元で告げる報告が漏れ聞こえてしまう。
「レオはビルから乱暴されそうになって……」
くそが……。
おそらくビルは安易な性欲の捌け口として、レオに迫り拒絶された。
貴族の三男として
握りしめた拳がガントレットの板金をしならせて、ギリリッと音を立てた。
「おい、落ち着け。ここで怒りを
とマーベル。女性職員に
「彼女の様子はどうだ?」
と訊ねると
「まだ泣いています。先に私がお茶を入れ直して落ち着かせますから、しばらくしてからが良いかと」
と給湯室らしき小部屋に入って行く。
そこへトントンと階段を上がってくる音がして、ミランダが顔を出した。
「あら、そんなところで怪しい打ち合わせ?」
マーベルと俺を交互に見ていやらしく笑う。
コイツ腐女子だったか?
「バァカ、そんなことよりな……」
と言い淀んでいるとすでに勘づいていたのか、片眉だけ器用にあげて唇に人差し指を添える。
「私が先に行って落ち着かせるわ。詳しい話は後で」
とヒラヒラ手を振って執務室へ入って行った。
――――おおかたの聞き取りが終わると、もう日が暮れるくらいの夕刻になっていた。
「職員を派遣してレオ君の弟を
避難施設へは明日案内する」
マーベルは幾分優しげな顔でレオを見てゆっくり頷いた。顔は厳ついがなかなか心優しい男みたいだ。
「ビルは二人が保護施設に入ってから呼び出し調書をとる――っとその前にだ、ショーカン」
と俺に向き直る。
「まだ冒険者に登録してないだろ。ミランダから申請があったが問題ないよな?」
と聞いてくるから、ああ、と頷いた。
急にホクホク顔になったマーベルが
「ひさびさの
とニヤリと笑う。
「冒険者登録費と宿泊費はさっぴくが問題ないだろう?」
と付け加えるように言うから、
「ちゃっかりしてやがる」
と笑うしかなかった。
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