第98話 交渉
突如マーベルは笑い出した。
「歓迎するぜ
真っ白い歯を剥き出して肩をパンパンと叩く。
軽く叩いているつもりだろうが、ショルダーパットがガチャンガチャンと音を立てるくらいだから、生身で食らえばかなり痛かったろう。
そのマーベルがレオの方を見て、少し眉を顰めるとつるりとスキンヘッド撫ぜた。
「レオ、ショーカン……だったな? 話しがある。着いて来い」
と階段を顎でしゃくる。
これはレオの置き去りの件なのか? とミランダを見るとにっこり笑って頷くが、後ろから来た職員に捕まって一言二言話をするとこちらに向き直った。
「私は後から行くわ。前のパーティーの消滅手続きとか遺族への対応とかの――ね」
と話しながら少し目が潤んでいく。
そうか――ミランダの元のパーティーは、第五層でコカトリスに襲われて全滅したんだった。
「少しは気を利かせろ、四の五の言わずサッサと来い」
マーベルの苛立たしげな言葉に、全滅した者たちに指示を出した自責と懊悩を感じた。俺は何も言えず連れられるままレオと階段を登って行った。
――――マスターの執務室に入ると。
一番奥に重厚な執務机が鎮座している。
その両脇を分厚い本を並べた作り付けの書類棚が固めており、手前に商談用の革張りのソファがあった。
壁一面マホガニーのような板壁で覆われてあるから声が外へ漏れる事はなさそうだ。
ベッドみたいなソファへ座るように促されると、タイミングよく女性職員がお茶を運んでくる。
退出せずにそのままマーベルの横へ着座した。
「さて、だいたい予想は着いていると思うが、レオ――何があった?」
スキンヘッドの鋭い視線にレオはすくみ上がる。
「そう警戒しなくても良い、事実の確認をしたいだけだ」
と困った顔をするが、誰が見てもヤクザの親分がJCを脅しているようにしか見えないのだが?
「公平を期すためなの。貴女のためでもあるから心配しないで」
と女性職員がフォローするがレオは強張ったままだ。
「なぁ俺から話しても良いか? 大筋を俺が話して、レオが補足する方が話は早いだろう?」と持ちかけた。
「まず確認したいんだが、子供を危険なところへ置き去りにして放置する――これは犯罪だよな?」
「ああ、だからこうやって聞き取りをしている」
とマーベルはにがり顔だ。
「なら、まずレオとその身内の安全を保障をしてくれ。相手は貴族絡みだ、逆恨みされちゃかなわない」
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