第97話 手荒い歓迎

「よーしっ、いま殺すと言ったやつ出てこいっ」


 ゴリマッチョを床に転がすと、俺はあたりを睨め付けた。


「てんめぇ――っ」


 躍り上がって殴り込んでくる野郎ども。

 その大振りなフックの隙間にねじ込むように、胸パンを放り込む。もちろん十分手加減してだが。


「ごひゅっ」

「ふべらっ」


 これもお約束のように襲いかかって来るバカどもが、次から次へと壁のレリーフへと変わった。


「舐めやがってっ」


 しまいには剣を抜いた馬鹿野郎が一人。


「キェェェ――ッ」

 とひっくり返った声で斬りつけて来たから、左軸足を中心にクルリと半転し、その斬撃を避けた。


 振り落とされた剣はざっくりと組合の床に刺さって、抜けなくなってしまったようだ

 引き抜こうと顔を真っ赤にしている馬鹿野郎の腕を蹴り上げた。


「ンガッ」


 と蹴り上げられた両腕を万歳しながら後ろへタタラを踏んだ。


 そちらへ倒れ込むように体を沈めると右腕を振り抜こうとした時。


「やめんかっ!」


 と頭上から怒号が降って来た。


 誰だよ? と頭上を見上げると、厳しい顔のゴツイ男が階段からのっしのっしと降りて来る。


「鎮まらんか、バカどもがっ!」


 激しい叱責にジャパニーズの俺としては、ピタリと動きを止めた。


「ずいぶん好き勝手に暴れてくれたな?」


 俺の方をギロリと睨むと青くなっている職員へ

こいつら負傷者を治療室へ連れて行け」

 と、声をかける。

 

 指示を出して改めて向き直ると

「喧嘩をしに来たのか?」

 と、なかなかドスの効いた声で尋ねて来た。


「降って来た火の粉を払っただけだ。俺は話し合いをしたかったんだが――」


 と肩をすくめてみせると、そいつは心当たりがあるのか、ふんっと鼻を鳴らし職員に引きずられていく男たちを見やった。


「俺がここのギルドマスターをしているマーベルだ。馬鹿どもがつまらんことをしたようだな。後でたっぷり焼きを入れてやるがおまえもやりすぎだ」

 とギロリと睨んだ。


 ここで楯突いて暴れても良いが鉾の収め時だ。

 軽く肩をすくめて軽く頭を下げ、改めてマーベルと名乗る男を見る。

 

 よく日焼けした髭面のスキンヘッドで、首から頭にかけて黒い炎の入れ墨、細い眉毛の下には鷹のような鋭い眼光が光って、注意深くこちらを観察している。

 身長は俺より少し低いが横幅は倍くらいある筋肉だるまだ。


 こいつは強い。

 狙うならスネか膝しかないだろう。と俺も油断なく観察していると、突如マーベルは笑い出した。


「歓迎するぜ新人ルーキー

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