第92話 ダンジョンの出口に到達

 間抜けな音がすると、次々に鉄塊に変わり収容されていくアイアンゴーレムたち。

 こんなに脆いのか? と聞いただけなのに山師どものツッコミが入る。


 俺氏、何をした? と、問いたげな俺にミランダは呆れた顔をしてる。

「アイアンゴーレムは脅威度10なんだけど。それも12体も出て来たら領兵団で当たるクラスなんだけどね――ともかく助かったわ」


 と、バチバチと雷音をまと魔法杖ワンドを一振りすると、沈静化させて腰に収めた。


「ショーカン更に強くなってない?」

 レオがジト目で聞いてくる。


「ん? そうでもないぞ。レオやミランダが後ろにいるからいつも以上に力が出たんだ、と思うぞ?」


 そう言ってやるとレオは不思議そうな顔をして肩をすくめた。


「……まるで吟遊詩人の歌う騎士ナイトじゃないさ。そんなの臭いよ、やめてよね」

 とそっぽを向いた。


「これはこれはお姫様。気に障ったのなら平にご容赦ください」

 と丁寧に膝を折りフェイスガードを上げて伺い見ると、照れ臭そうに駆け出して離れて行った。


 年頃の子ってわからん。


 それを生暖かい目で見ていたミランダが、パンパンっと手を叩いて空気を変える。

 

「さあ、ともかくここから離れるわよ。事案インシデントが終わったわけじゃないわ。警戒は各自怠らないでね」


 山師たちの「なんなんだアイツ」という畏れを含んだ視線を浴びながら、俺を先頭にレオをナビゲーターに、山師一団を挟んでミランダを殿に隊列を組み直して上層へ抜けていくと、第一層が広がっていた。

 

 俺は兜を空間収容イベントリにしまい、大きく深呼吸してみる、生臭かった迷宮ダンジョンの香は影を潜め、爽やかなレモンのかおりがした。


「ここは薬草のエリアと呼ばれてる。出てくる魔物もスライムとかゴブリンくらいだからFランクの狩場なの」

 レオはこの層に何度も来たことがあるそうで解説してくれた。

 

 最後尾にいたミランダが

「皆んなに事案インシデント発生の声かけをして」と合流したパーティーに依頼しながらこちらまで駆け寄ってくる。


「ここまで来たらそう危険はないわ。『共助の情け』は十分果たしたし事案インシデント発生の警告は彼らに任せた。私たちは組合へ報告に急ぎましょう」


 そう言いながらも出会うパーティーに警告を発しながら歩を進めていく。

 やがて洞窟に入り鉄の扉にたどり着くと、独特の拍子で扉を叩き始めた。

 

「お疲れ様。ここが迷宮ダンジョンの出口よ」

 

 重厚な鉄の扉が左右に広がっていくとまばゆいばかりの光が溢れ出して来た。

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