第83話 洞窟で出会った男は?

 進化を済ませた俺と魔法の概要を教わった俺たちは、新しいパーティーに生まれ変わりと次へと向かう。


 ――――安全地帯セーフティーゾーンの扉を開けると、洞窟が続いていた。

 俺の鉄靴サバトンの立てる靴音が剥き出しの岩肌に、コツンコツンと反響する。


 所々に松明たいまつが配されているのは回廊と同じで、通り過ぎるごとに回収して回ったから背後には闇が広がって行った。


「ショーカン、もうそんなに松明たいまつは要らないんじゃないの?」


 歩きながら魔力の循環を練習していたレオが、呆れた目で見てくる。


「わからんぞ? わかるもんか。今にも出てきそうな雰囲気じゃねぇか?」


 レオは、怯えすぎだって――と肩をすくめ昨日習いたての魔力を循環させる練習に戻った。

 ミランダはそんな俺たちを可笑しそうに見ている。


「魔物は人間と違う魔力の流れがあるって言ったでしょう? 魔力の流れさえ気をつけておけば、亡霊系の魔物も接近したらわかるから肩の力を抜いても良いわよ」

 

 経験者の余裕か?

 時折、俺の足音に驚いた蝙蝠コウモリがキーキー鳴きながら飛び交うが、全く動じる気配がない。

 そう話していたばっかりなのに、俺の中の“怖いものセンサー”がけたたましくアラートをかき鳴らした。


「みんな気をつけろ! なんかいるっ」


 松明たいまつ空間収容イベントリから取り出すと、それぞれに放る。


「火をつけろっ、前を照らせ」


 そう喚き立てる俺にミランダが首を傾げる。

「私は何も感じないけど……」


 まぁ貴方が気が済むのなら、と着火魔法で一気にそれぞれの松明たいまつに火をつけた。


 ――いた。

 黒い喪服を着た男がやけに青白い顔をにやけさせながら近づいてくる。こいつは魔力の流れで検知できなくても仕方ない。


「やぁ、助かったよ。こんなところで足をやられてしまってね。悪いが外界までご一緒させてもらえないだろうか?」


 軽く目を伏せ胸に手を当てる。

 日本のお辞儀じぎとは違うがこれがちゃんと礼儀であることは俺にもわかる。


「あら、遭難者なの? こんなところで災難だったわね」

 とミランダさん。


 お人好しかよ!? 絶対に怪しいだろうがよ。

 ソイツは全力で警戒している俺をチラリと見て苦笑いしやがった。


「どうか助けて欲しい。喉が渇いてたまらないんだ――」


 と言いつつミランダとレオに目を向け両掌で顔を覆い隠した。


「喉が渇くんだ――が欲しくて……血が欲しくてたまらないんだっ」


 顔を覆い隠した両掌の爪が鉤爪に変わり、飛びかかって来た顔は口が耳元まで裂けていた。


「きゃぁぁ――っ」

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