第81話 魔法の概念

 ショーカンの『在庫システム』を知ったミランダ。驚きに目を見開いていたが、食事が終わる頃になると落ち着いて来た。


 ――引き継ぎレオ目線です。


 少し落ち着いたところでミランダさんが

「ちょっと錬成をしてみて」と促して来た。


 これは魔法を教えてくれるに違いない。

 嬉しくて冒険者組合で習った魔素の錬成をしてみせる。これは魔法などではなく呼吸法みたいなものだ。

 キラキラと金粉が舞い、それを鼻から吸って口からゆっくりと吐き出すイメージ。

 そうしてるうちに指先がポカポカしてくる。

 それを繰り返すと骨や筋肉に浸透させて行くイメージへ。これだけでスタミナが違ってくるそうだ。

 これで魔臓器の魔素が活性化しているはずだ。


「ふぅん、真面目に錬成の練習はしてたのね」

 

「そりゃあもう、身近にあんなのがいるんですから」

 と後片付けをしているショーカンを顎で指す。


 少し意外そうな顔をしてミランダさんは手を握り返した。

「警戒してるの?」

「ん――どっちかと言えば負けられない……かな?」


「なんで?」

「どんどん強くなって行くんですもの。脅威度60相手に突っ込んでいくし」


 それは盾役としては最高なんだけど……と言いかけて、私に目を戻す。


「貴方を守りたくて必死だったのかもよ?」

 

「そっかな――? 考えたことなかった。たまたまこんな流れになったけど私だって必死だったし。なんでかな……?」


 無意識に右腕に絡んだ魔法絆バイパスを触る。

 あら? とミランダさんはそれに気づいたようで

「良いチームね」とニッコリ微笑んだ。


「さ、少し魔法の勉強をしましょうか? 魔力ってなんだと思う?」

「魔法の元みたいなもの?」

 

「そうなんだけど魔力ってね。『活性化した魔素が“流れと方向”を持ったのもの』なの。

 例えばたくさんの水を集めて決まった方向に流すと、水車だって回すことができるでしょう?」


「水流みたいなもの?」


「そう。その方向と流す量が魔力ってわけ。

 その魔力を魔法に変える術式が魔術で水車の役割ね。その水車も粉を引くだけじゃなくて油を絞ったり、揚水に使ったりするでしょう? その使い方を魔法って言うの」


 そうして魔法について教えてくれた。

 

「魔法の威力は効率よく魔力を術式に流し込めるかによるわ。だから魔力の流しかたから練習しましょう」


 ミランダさんは私の手をとって、魔力の流れを感覚的に教えてくれる。

 

 結局その日は第四層の安全地帯セーフティーゾーンで一夜を明かすことになった。

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