第77話 ミランダの提案

 俺の秘密と引き換えに レオの弟子入りを持ちかける俺。

 そうねぇ……とミランダは半眼になってこちらを見据えた。


迷宮ダンジョンの階層異常は貴方が関わっているかどうかはわからない。でもショーカンさん、貴方はとても異質なのよね。

 そんな正体不明の人から弟子を預かってくれって言われても不安でしかないんだわ。普通は貴族とか身元のしっかりした人以外は受け付けないよのね」


 と冷たく見返してくる。


 身元保証人か――どの世界でも信用が必要ってわけか?

 魔道士ともなれば高収入ハイソなんだろうし、身元を保証してくれる人がいなければ悪党ハイエナが入り込んでくるんだろう。

 

 よし、こうなりゃ腹を括ろう。

 これまでのミランダの行動を見ると誠実そうだし、レオを任せられると思っていた。

 身元がない俺は、自分をさらして信用してもらうしかない。


「わかった全て話そう。まずさっきのエリア除霊? 『言霊水』からだが――」

 と在庫システムを使ったことから話し出した。

 そしてレオと出会いこれまでにあったこと、レオの信頼度が上がると進化して人間として蘇ることも全て話した。


 話が一段落するたびに「はぁ?!」とか「な、なんて言ったの? 今」とか驚いていたミランダだが、話し終わるとぐったりとしてソファに深く身を沈めた。


「つまりショーカンは転移者で、空間収容イベントリ持ちで、しかも空間収容イベントリの中身を変換する能力があり、進化して人間になる――と?」

 要約しながらこめかみの辺りを揉んでいる。


「そうなるな」


 ミランダは、はぁ――っと深くため息をつきながら、髪をかき上げてしばらく悩んでいる。


「レオちゃんは置き去りにされたところを、偶然転移して来たショーカンに助けられてここまで来たのね?」


「そうだよ」


 レオが応えると少し憐れむような優しい微笑みに変わる。

 

「そっか――助けられた縁もあるしね。弟子を取っても良いんだけどレオちゃん、内弟子ってね。

 タダ働きな上に雑用は多いし報酬はピンハネされるしろくなもんじゃないわよ? それでも良いの?」


 うん、と頷くレオを優しく抱きしめて俺に顔を向けた。


「レオちゃんの弟子入りの件だけどお断りするわ」


 え……なんで?

 この流れは「いいわよ」の流れじゃないのか?


「なんでだよ? 俺が死霊騎士リビングアーマーで、レオが平民だからか?」


 ムッとしながら理由わけを訊ねる。お貴族的な返事なら一発ぶん殴る気でいた。


「それよりもっと良い考えがあるからよ。私たちパーティーを組まない?」

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