第76話 王宮クラスの安全地帯は王宮あるあるで駆け引きも要求されるらしい

「だからここの正解はリーダー以外が小さな扉を開けることよ」

 とミランダが扉を開けると、そこには柔らかな照明に包まれた、まるで王宮の応接間のような部屋が現れた。


「こんなところがあったなんて……」

 とレオが言葉を失っている。


 ミランダは私も最初は驚いたのよ、と、かつての自分を重ねたのか満足げに微笑んだ。


「回廊の第一ブロックに入る時に大小の扉があったでしょう? それも同じカラクリ。大きい扉をリーダーが選んだパーティーは亡霊系の魔物に襲われ続けるわ。

 そして帰る時にも学習しないまま、来た道を戻ろうとすると聖水を使い果たして戻れなくなる」


 反対に――と二十畳はありそうな豪華な応接間の中央に据えてあるソファに腰を下ろすと

「入った時のパターンを学習して逆を選んだパーティーは、こうして安全地帯セーフティーゾーンで羽を休めることができる」

 ん――っと大きく伸びをするとドヤ顔で笑った。


「まるでRPGだな……」

 豪華な安全地帯セーフティーゾーンのあちこちを撫ぜ回しながら独りごちる。


「さて、ショーカンさん。貴方は一体何者? 貴方ほどの魔法の遣い手で、盾役も剣士もこなしてコカトリスすら倒せる冒険者なら、私が知らないはずがないんだけど?」


 魔法の遣い手とな?

 俺はただ単に『在庫システム』を起動させただけだが?


 俺の不思議そうな顔をミランダは挑発と受け止めたようだ。


「惚けるつもりなら無理強いはしないわよ――。レオさんの置き去りの件は私も問題にしないわけはいかないし、貴方も冒険者組合で尋問の対象になる」


 なにより、と芝居掛かった仕草で両手を広げた。


「こんな浅い階層に出るはずのない脅威度60のコカトリスが出て来た直後に、貴方たちが現れた。

 魔迷宮ダンジョンの階層混乱を招く異物、特異点が紛れ込んだと私は睨んでいる」


 手のひらを組み顎乗せにしてこちらを睨め付けた。


「ここで正直に教えてくれるなら、私は貴方たちの味方をしても良いけど……」


 どうする? っと目線で語って来やがる。


 俺とレオはしばらく顔を見合わせていたが、レオが俺の特殊な事情を話したものかと眉を顰めていたから、思い切って俺から話すことにした。


「その前にお願いしたレオの弟子入りの件だ。

 もし認めて貰えるなら話すのもやぶさかじゃないし、オーク素材2体分も渡す。もちろんアンタがレオに妙な真似をしたら反撃する条件つきだがな」


 そうねぇ……とミランダは半眼になってこちらを見据えた。

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