第75話 選択の時間

 俺の『言霊』はあちこちで亡者を破裂させた――らしい。

 

「――で。なんなの貴方。体中からミストを発生させながら『霊言』を声に乗せて霊体に干渉して、亡者とアンデッドたちをエリアごと破裂させる? そんな魔術聞いたことなわいよ」


 ミランダが理解不能、と言わんばかりに俺を見ている。


「あ? ああ、それは秘密だ。おまえだって秘術の一つ二つ持ってるだろう?」


 俺はなんだか面倒くさくなって適当に誤魔化すことにした。なによりこんなところから一刻も早く出ていきたい。


「ええ、そうね。でも次の安全地帯セーフティーゾーンで概要だけでも教えてもらうわよ?」


 それはもう決定事項だ、と言わんばかりに言い放つと暗い回廊を進みはじめた。


 ――――松明たいまつを2本ほど消費した頃合いになると。

 回廊の壁の両側に、大小のいかにも重厚な木の扉が待ち構えていた。胸の高さにそれぞれ金属のプレートが嵌め込まれている。


 大きい扉と小さな扉。さてどっちの扉を選ぶのか?

 まるでゲームのフローチャートだ。大小の扉を誰がどちらを開けるかによってこの先の展開が変わるのだろう。


 レオは上着の内側から取り出した地図に松明を近づけ、メモを読み取ると

「こちらに来る時はこの右側の大きい扉から出て来た。だからこちらの扉で良いはずだけど」

 と指差す。


「待て、その時は誰が開けたんだ?」

「チームリーダーのビルだよ」

「そのあと起こったことは?」

「亡霊とアンデッドが出て来たけれど、聖水を撒きながら追っ払っていたよ?」

 なんでそんなことを聞くの? と不思議そうな顔をしている。


 ミランダが微笑みながら

「よくカラクリに気づいたわね、ショーカン。この『選択の扉』はを開けるかによって、この回廊に出てくる魔物に差がつくの」

 と、レオに反対側の小さな扉を指す。


 つまりレオがこちらに来る時はを開けて、アンデットと亡霊が湧いて出た。

 前回と同じ魔物が出て来たということは同じ条件で開けた場合、この奥で起こったことも同じになるはずだ。


「死ぬほどアンデッドに襲われて、聖水を撒きながらここまで必死に逃げてきた」


 おうっふ……もう勘弁して欲しい展開だぜ。


「だからここの正解はリーダー以外が小さな扉を開けることよ」

 とミランダが扉を開けると、そこには柔らかな照明に包まれた、まるで王宮の応接間のような部屋が現れた。

 

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