第73話 亡者どもの襲撃

「何もタダとは言わねぇ。オーク素材2体でどうだ?」


 ミランダの放った浄化魔法を見て『レオを弟子入りさせられないか』と閃いた。

 オーク一体で360万円もするんだ。

 魔法を教わるのに大金を積むって言ってたが2体分なら、レッスン料としては悪くないんじゃ無かろうか?


「……とりあえず安全地帯セーフティーゾーンで話だけ聞くわ」


 ミランダは厳しい顔になり先導を始めた。


 ――――二つ目の角を曲がると。

 これまで煌々と足下を照らしていた松明がなくなり、暗い回廊へと変わる。


「ここからはアンデットが襲ってくる。脅威度は1だけど攻撃すると仲間を呼ぶから逃げること――くれぐれも倒さないでね?」


 それってフラグ?

 ともかく倒したらダメなのね。頭に置いておこう。


 さっきの回廊で引き抜いていた松明たいまつに、レオが火打石から切り火を飛ばしている。

 そんな時、ぬちゃり――気色悪い足音が聞こえた気がした。

「レオ……変な気配がしねぇか?」

「慌てないで。もう少しで着火するから」


 何度目かの火打石の火花でボウッと燃え上がった松明に浮かび上がったのは、壊れた体を引き摺るアンデット。


「うわぁぁぁぁ――っ バスターソードォォォッ」


 思わず俺はバスターソードを顕現させて、ソイツの頭を吹き飛ばした。

 だが倒れ込んだその体は消えることなく、飛ばされた首の穴から

「ぴ――っ」

 と音を立てている。


「うが……」

「「うごぁ……」」

「「「ごぉあ……っ」」」


 声にならない呻き声があちこちから湧き出て来て、こちらに近づいてくる気配が充満し始めた。


「た、倒さないでって言ったのに! もうっ」


 ミランダが切れ気味にこちらを睨むと『浄化の魔法』を唱え始めた。魔法杖ワンドから光が溢れて群がって来るアンデットたちを包み込んで行く。


「『浄化』!」


 ミランダの掛け声とともに、光の帯が弾けてアンデットたちが崩れて消えた。


「「「ぎぃ……」」」


 それでも湧き上がる声は止まない。


「ちっ、一回戻るわよ。ここにいたら無限に湧いて来る」

 ミランダが回廊へ戻りかけた時、今度は背後から灰色のかすみが巻き起こり人の顔を成した。


『喰らわせろ……』


 にちゃりと口角を上げたソイツはフラフラと漂うように近づいてくる。


「魔力が足りない。『浄化』を撃ててもあと二回よ!」

 ミランダが魔法杖ワンドをかざしながら、こちらに青い顔を向けた。


『ひぃぃぃぃぃ! 在庫システムぅ浄化もの出して』


 半泣きで浄化、浄化――と念じていると、目の端にカーソルが点滅し始めた。

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