第67話 リビングアーマーの一撃

 巨大な鳥もどきに襲われてあまりのリーチの差に攻めあぐねている時。

 

「二人とも伏せてっ」


 と鋭い女の声に反射的に地に伏せた。

 ボワッと空気が震え一瞬熱波が頭上を通り過ぎる。布が焼けたような匂いがして頭をあげてみると巨大な鳥もどきが炎に包まれていた。


「グォォォ――ッ」


 激しい熱に身をよじり凄じい咆哮を上げながら炎を擦り消そうと地面に転がり暴れ回る。


「うおっと!?」


 このまま一緒に擦り潰されてはかなわない。慌てて身を起こすと距離をとった。

ビタンビタンッと身を地面に擦り付けて鎮火させた巨大な鳥もどきは、8メートルはある体を起こしてあたりを睥睨する。


「グァッ」


 出現した新たな脅威に、どこだ、どこにいるのだ? と探しているかのようにあたり構わず威嚇し始めた。


「今のうちに逃げてっ」

 先ほどの女の声が鳥もどきの向こう側で聞こえた。


「グァ?!」


 鳥もどきはダチョウのような顔をそちらに向けると、身をひるがえし向き直る。

 こちらへの意識が途切れた。

 今、やらねば殺られる――手盾バックラーを手放し、剣を両手でしっかり握りしめると俺は飛び出していた。くの字形に曲がるヤツの脚の太もも部分にバスターソードを突き入れる。


「ふんっ!」


 半ばまで埋まった剣を強引に引き抜き、襲ってくる足の鉤爪かぎずめをぶっ叩く。


「ギャァァァァ――ッ」


 あらぬ方向に曲がった足をかばって、前脚で体を支えながらくちばしを突き入れてくる。

 両手とくちばしの三方から襲われないなら対処はできる。ヒュンヒュンと音がして、時折鳥もどきの攻撃が止むのはレオが投擲してくれるおかげだ。


「グァッ!」


 忌々しげにそちらを睨んでは目の前の俺にくちばしを突き出す。やがて少し疲れたのか大きく頭を持ち上げてブルブルと振るった。

 目の前に体を支える前脚と柔らかそうな腹部が晒される。


「だぁ――っ」


 まずは前脚。

 巨大な後ろ脚に比べて細い前脚に斬りつけた。

 ボキッと骨が折れる音がして、支える前脚をなくした鳥もどきは横倒しになる。

 慌てて体を起こそうとするが、その頃には俺が大きく跳躍して喉元まで迫っていた。


「んなぁ――っ」


 ぶっとい首に振りかぶったバスターソードを叩きつけると、ナタで薪を割るような手ごたえと裂かれた首から吹き出す青い血が。

 ビクンッと体がのけぞった。


 そのまま顎下にバスターソードを突き入れると、あっさり鍔元ガードの根元まで入っていく。


「ホウ――」


 ため息のような声を最後に、巨大な鳥もどきは魔素を吐き出し消えた。

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