第63話 第五層への到達

「いっ痛ぁ」


 レオの緑色の模様が輝き出し、俺の頭の中に例のアナウンスが響き渡った。


『レベルアップしました』


 なんとまぁ、薄々は予感していたがここでレベルアップが来た。


『アイテムが入手できます。どのアイテムにしますか?』


 カーソルが左から右へと走り、文字を紡ぎ出していく。


『◯左腕

 ◯右足

 ◯左足

 ◯――

 ◯――――』


 ここは左腕でしょう。ポチッとな!


 左肩が盛り上がっていきそのあとズズッと押し出されて行く気がする。寝巻きを着るときに指先が引っかかって無理に押し込んでいる感じ?


「ぬぬ……?!」


 体中が熱を持っている。

 感覚がおさまるとリビングアーマーの手甲の圧力を感じた。

 左手の『感触』も戻って来たらしい。

 ニギニギと手のひらを開閉してみる。――あぁ、この感じ。


 やっと両手の感覚が戻ってきた。

 これまでもなかったわけじゃないが、細かい物を触った時の指先まで通る感覚。

 例えるなら箸でピーナッツを摘みあげた時のような繊細な感覚がが戻ってきた。


「よーし。レオ、左腕も戻ってきた」


 とニンマリと笑う。

 レオとしては腕があるのご当たり前だから、俺が嬉しそうにニギニギしているのを気持ち悪そうに見てる。


「そ、そう? 良かったじゃん」


「そうだ――人間にまた一歩近づいた感覚だな。今日はご馳走作ってやるよ」


「自分祝い?」


「いや、レオの魔道士への第一歩祝いも兼ねてだよ」


 そう言って笑うと、レオは照れくさそうに額を撫ぜる。

 そこには魔臓器まぞうきが生成された証の、緑色の笹の葉のような魔素斑まそはんが浮かび上がっていた。


 ――――オークのステーキを平らげて。


 第6層を順調に攻略している。

 このフィールドに出てくるのは、さっきのサーベルタイガーの餌となる魔物が中心だ。フィールドボスを維持するために、それだけ多くの獲物を配置しているのかも知れない。


「レオッ、そこだ」


 指を刺すだけで投石器で仕留めていく。


「よーしっ、これで30匹は行ったな」


 空間収納イベントリに収容された素材の数を記憶を辿りながらカウントすると、レオの獲物だけで36匹は収容されているようだ。

 引き換え金額にしてホーンラビット1匹あたり2,500円だから、これだけで90,000円は稼いでいることになる。


 ハイタッチをして草原の道の先を見れば、そこには岩山にぽっかりと口を開けた第5層への出口が見えた。

 

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