第59話 サーベルタイガー
「なんかいる……」
先行して歩いていた俺は後から来るレオを手で制した。
目を凝らさねばわからないほど風景に溶け込んでいたヤツがゆっくり姿を現した。
「わざわざ姿を晒したという事は、よほど自信があるか威嚇するためか……」
いつでも反応できるようにしながら、相手をしっかり観察する。黄金色の毛皮に猫科独特のしなやかな足運び。
不自然に飛び出した牙は顎の可動範囲の大きさを象徴するようだ。
「サーベルタイガー?!」
ゴクリと唾を飲み込みながら呟くレオの声が聞こえた。
地球上で絶滅したと聞いていたが、
10メートル以上離れているのに、軽く普通車ほどもあるように見えるのは異世界の定番なのか? その巨大な筋肉でもって一瞬で距離を詰めてくるのだろう。
『在庫システム、バスターソード、バックラー』
と念じると上腕にバックラーが装着され、広げた手のひらにバスターソードのズッシリとした重さが顕現する。
バックラーを前に掲げて、バスターソードの剣先を乗せると、左半身に構える。
キンキンッと打ち合わせて、飛びかかって来たらコイツがブッスリと行くぜぇ? と
サーベルタイガーはしばらく動きを止めて、こちらをじっと観察している。
やがて身を低く沈めたかと思うと飛びかかって来た。
即座に反応して剣先を突き出す。
が、サーベルタイガーは剣先が届く直前で急停止し、剣の引き際で前脚を振るい、鋭い爪でバックラーごと叩き伏せに来た。
同時に少し腰を浮かし上から爪を振り下ろしてくる。
俺は前脚を前後に入れ替えて距離を取り即座に剣を突き出す。
と同時に後ろへと声をかけた。
「レオッ、(こいつ)
「わかった」
と跳ね返ってくる声に、意識を前へと集中させる。
サーベルタイガーはさすがに前脚一本で引き倒すのは難しいと判断したか、両前脚で引っ掻きにきては飛び出た牙を振り回す。
「グォッ!」
猛獣独特の荒々しい咆哮をあげながら、上下左右から鋭い鉤爪を放ってくる。
前脚で押さえ付け牙を突き立てて仕留める――こいつの狙いはただそれだけだ。
動きは直線的な代わりに左右から鋭い鉤爪を振り下ろしてくる。
そこまで動きを読み取ると、左前脚から繰り出された猫パンチに合わせて飛び込んだ。
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