第47話 リビングアーマー吼える

「オーガだっ」


 レオの悲鳴とともに、細い路地から額から2本の角を生やす大男が飛び出して来た――10人も。

 手に手にメイスをたずえている。


「ウッソだろ?! おいっ」


 メイスは金属の頭部を持つ棍棒で、プレートアーマーにめちゃめちゃ相性がよい。

 先端の突起やスパイクで衝撃点を集中し、厚いプレートアーマーをへこませたり貫通したりすることができる――――と空手の師匠軍オタクから聞いた。

 

 つまり相性が最悪の相手。

 しかもこちらはレオを守りながら戦わねばならない。

 

 そんな時は空手の師匠軍オタ曰く『1対多でも一人に打ち掛かれるのは8人が限度』だから慌てずに

『その8人の打つ太刀にも遠いのと近いのと遅いのと早いのとがある』のを見定め、攻防のタイミングと位置取りポジショニングが肝要だ、と言ってたのを思い出した。


 まずはレオを安全なところへ逃すのが最優先。

 

「こっちだ」

 とレオの手を引いて手近な建物へ逃げ込んだ。すぐに戸口を閉めて心張り棒つっかえ棒で引き戸を固定する。

 あたりを見回し納戸らしきものにレオを押し込めた。

 

「じっとしてろ。俺が敵を引きつける」

 

 と言い残して戸口まで走り寄ると、戸口の障子にオーガらしき影が映った。


 俺の得物バスターソードは150センチある。

 このまま屋内で振り回すには柱や壁が邪魔になって不利だ。

 屋外で振り回し斬撃というよりどちらかと言うと叩きつける、もしくは突撃に向いている。

 

 これは使い方はまるっきり違うのだが、俺の習った古武流空手の武器術に通じていて棒術を基本とし、他の武器を応用とする。

 師匠軍オタ曰く『空手の突きと払い受けの基本がこの棒術に凝縮されているから』らしいんだが『カッコ良いし――』と付け加えてたので真偽は疑問だ。


 40センチはある柄を柄頭とガード(刀で言うつばの部分)の目いっぱい広く持ち、左足前の左構えに身構えた。


 障子に移るオーガの影が増えている。どうやら囲まれたらしい。

 オーガの影がくっきりと輪郭を描いた時、

「うらぁっ」

 と目いっぱい突き入れた。


 豆腐を刺したほどの感触もなく、バスターソードがオーガを貫き障子に真っ青な血吹雪が舞った。

 即座に引き抜くとオーガの影が崩れ落ちる。間髪を入れず戸口を蹴破り外に飛び出した。


「やってやんぞっ、コラッ」


 絶叫とともにバスターソードを振り回した。

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