第48話 リビングアーマー奮戦する

 戸口を蹴破り外に飛び出した。


「やってやんぞっ、コラッ」


 一度は俺の勢いに押されて距離を取ったものの、2メートルを超す巨漢たちが、釘バットのようなメイスを振りかざして襲ってくる。


 右袈裟みぎけさから一人、左袈裟ひだりげさから一人。飛び退きたいのは山々だが、後ろに建物の戸口があって距離が取れない。

『――打つ太刀にも遠いのと近いのと遅いのと早いのとがある』

『攻防のタイミングと位置取りポジショニングが肝要』だったな――。

 瞬時に右からきたヤツのメイスを、右から左へと払いながら横っ飛びに飛ぶと、ちょうどいい具合に左側から来たヤツの盾になってくれた。


 飛んだ先にいたやつが打ち掛かってくるが、これは剣先をくるりと回すと喉元を掻き切る。

 まずは一人――。


 空手の団体形で1人が2人相手に型の使い方を実演する「分解」という競技がある。

 

 お約束だろ――なんて思っていたが、実戦を想像イメージさせなくちゃいけないから結構な殺気を放ってくるし、呼吸を読まねばならない。

 おかげで今、慌てずに済んでいる。

 

 コイツら1対1ならそれほどでもない。だが2、3人で同時に来るから厄介だ。

 なら『分解』してやれば良い。


 まずは強そうなやつに狙いを定めておき、かわしたり受け流したりしながら観察した。

 

早いやつ》→《強いやつ》→《トロいやつ》のパターンか《トロいやつ》→《強いやつ》→《早いやつ》。

 おおよそ流れは掴んだ。


 脇構えで剣を寝かせて誘う。


 「ギェェェ――ッ」


 案の定、奇声をあげてメイスを振り下ろして来た。 

 少し体を開いてメイスを躱わすとガラ空きの頭に一撃。普通なら届かない距離もバスターソードなら届く。

 その後ろから《強いやつ》のオーガが肩口目掛けて振り下ろしてくるのを、しゃがみ込みながら剣のしのぎ諸刃もろはの刃と刃の厚い部分)に手を添えて突き出す。


「ギェッ!」


 体がくの字におり曲がるとボシュッと魔素を吹き出しながら素材に変わり消えていく。


「だぁッ」


 体を開きながら横に一閃。

 たまらずオーガは飛び退いた。素早く身構えるところを見るとコイツは《早いやつ》だな。

 早いやつは目がいい。だからこそ罠にはまる。

 バスターソードをかつぐと一歩踏み込み、さっきと同じ軌道で横に振り抜いた――右手一本だけで。

 

 同じ距離でバックステップを取ったオーガは、さっきより伸びる剣先に首から上を飛ばされて消えた。

 

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