第49話 リビングアーマー奮戦する2

 右手一本で振り抜いた剣にオーガは首から上を飛ばされて消えた。


「ぬんがっ!」


 遠心力で手放しそうになるバスターソードを、信じられないくらいに強力になった膂力りょりょくで引き戻す。

 これで4人――。


 あと6人はいたはず――?!

 一斉に振り下ろされてくるメイスに脳が追いつかなくて、一瞬固まる。


「1発ぐらいは喰らってやらぁ」

 と遮二無二しゃにむに剣を突き出した。

 

「ガァァッ」

 

 耳をつんざくような咆哮と、ドカドカッと頭やら肩やらに衝撃が走る。ゴスッと嫌な音が兜の中で響いて、目の前に火花が飛んだ。


 なんでだ? オークの時はこんなことなかったのに。

 俺が生身なまみに戻りつつあるからか?

 と、してもモタついている場合じゃない。俺が倒れれば、このメイスはレオの元に届く。


「ぬがぁぁぁ――っ」

 力まかせに横に振り抜いた。


「ギャァァァァ――ッ」

「ゴホァ!」


 手ごたえで重いものが2つ飛んでいくのがわかる。

 生温いものが目を塞ぎ、目の前は真っ赤だ。視界も悪いが、鼻血も出ているようで息が詰まった。

 これが蘇生の代償か? 痛みはないが負傷した心理的ダメージはある。

 

「ぷぁ――っ」


 鼻から流れ込んだ鉄の味がする塊を、吐き出しながら横薙ぎに振るった剣を引き戻しながら腰を沈める。

 頭の上をビュンッとメイスが通り過ぎていった。トゲトゲのついたメイスが突き入れられてくるのを、剣のしのぎ諸刃もろはの刃と刃の厚い部分)で受け、こじって軌道を逸らすと、そのままオーガの首筋に押し当て引き斬る。


「ギャァァ――ッ」


 悲鳴が上がった次の瞬間には、ガシャーンッと金属がぶつかる音がして、メイスが俺の腿に食い込んだ。そのままあり得ない力で引っ張るもんだから、思わずよろけてしまう。


 そこへまたメイスの殴打の嵐だ。

 ガンガン、ガシャーンッと車が玉突き事故を起こしたような派手な衝撃音と、壊れていく冷たい恐怖が襲ってくる。目の前が真っ赤でろくに見えやしない。


「ぬがぁぁぁ――っ」


 音を頼りにバスターソードを振り回した。


「ギョエッ!?」

「「ガハァァッ」」

 

 3つほど重量物が吹き飛んでいく感覚と悲鳴が連なる。

「ぶはぁ――っ」

 と何度目かの口の中の塊を吐き出して、頭を振ると視界が少しマシになった。


 あと何人だ――?

 あれ? なんか増えてね?


 地響きを立てて、駆け寄ってくるオーガたちが見えた。

 おかしくね? 7層の方が強い魔物な気がするんですけど。

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