第50話 リビングアーマーは今さら気づく

 駆け寄ってくるオーガたちが見えた。

 おかしくね? 7層の方が強い魔物な気がするんですけど。


 そのうちの1人が急に頭をのけ反らす。

 その隣のやつもその隣も。


「ショーカンッ」


 聞きなれた声が上がり振り返ると、レオが投石器を振り回してた。


「頭を下げてっ」


 その声に弾かれるように腰を落とす。

 頭の上をピュンッと石が通り過ぎていき、オーガに命中する。


「何やってんだっ、隠れてろって言っただろ?!」

「ショーカンやばそうじゃんっ、だから出て来た」


 ええ子やぁ……なんて思ってるヒマはない。


「冗談だろ? 俺が危なかったら――」


 と飛び込んできたオーガを一刀両断する。


「――こんな真似できねぇだろ?」


 フェイスガードを上げて、不敵に笑って見せて腰を落とした。


「げ?!」

 と驚くレオ。

 

 飛び込んできたオーガの後ろから『強いやつ』のオーガがメイスを振り回して来たからだ、と思う。

 さらに身を沈めてそれをかわわし、そのままバスターソードを突き入れる。

 ポシュッと魔素を吐き出しながら消えて行く後ろから、また別のオーガが鈍臭どんくさくメイスを振り下ろそうとしていた。


 剣をひるがえして振り抜くと、そのまた後ろから別のオーガが来ていたようで、一緒になって足を払われてドタドタと転がる。


「ガァァ」

「ゲェッ」


 何か喚きながら立ちあがろうとするから、袈裟斬けさぎ逆袈裟ぎゃくぜさと斬り捨てた。


「ぷはぁ――っ」


 首を勢いよく振ると視界が少し回復する。

 まだまだ湧いて出たようにオーガが集まってくるのが見える。


 レオを背にかばいながら鋭く突き入れられてくるメイスをかわわし、そのまま逆袈裟ぎゃくげさに切り上げると、オーガはさっと後ろに飛び退いた。

 振り切った反動で胸元に戻ってくる剣の柄を握り直し、片手で突き出すとさっきと同じ距離感で飛び退いたオーガに届き、胸を刺し貫く。


 グリップエンドが付いているバスターソードならではの技だ――と思う。膂力りょりょくも上がっているから、2キロもあるのに竹刀を振り回している感覚だ。

 

「ともかくレオは下がってろっ」

「わかったっ、後ろから掩護えんごするっ」


 とととっと遠ざかる足音を感じながら、押し寄せてくるオーガを睨みつける。

 

「「「グォォォ――ッ」」」


 なんでそんなにいっぱい来るの?!

 俺、なんかした?

 親の仇じゃあるまいし――?! 


『――迷宮ダンジョンの魔物は魔力に惹かれて来るからね』

 

 ってレオの言葉を思い出した。


 俺はこれまでたくさん魔物を倒してたよね?

 その分魔素も――という事は俺?

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