第56話 ビビりのリビングアーマー
妖怪のあまりの恐ろしさに俺は
頭の中で思いつく限りの必殺ブローを叩き込む。
『んがッ、んごッ、ふべらッ』
逆さ吊りの女は漆黒の魔石へと変わり、
「はぁっ、はぁっ――なんだよもうっ」
目の前には板張りの廊下が薄暗く浮かび上がっている。
「ショーカンッ、ショーカンッどうしたの?! 妖怪が見えたの?」
「んがっ、れ、レオか? 出たよ、出ちゃったんだよっ」
「何が?」
「真っ白い服を着た女がさっ! 逆さ吊りになって『連れて行けぇぇ――っ』ってさ(言うんだよ)」
後半は口が乾いてパクパクしてるだけだ。
「へぇ……それって、こんな感じ……?」
振り向いたレオの顔には目も鼻も口もなかった。
のっぺらぼうだ。のっぺらぼうだ。のっぺらぼうだったんだ。
「ひぃぃぃぃぃ――」
また必殺ブローを叩き込もうとして踏み止まる。
これが常態異常だとすると、レオは一生許してくれないどころか死んでしまうかも知れない。
「
そう言って今来た経路を逆方向へ走り出した。
『宿屋』の外へ逃げ出す。
復活したばかりの胸部の心臓がバクバクいってヤバい。
「レオッ、レオッ、一旦戻ってこいっ。ここは非常にヤバいっ。ヒジョーにヤバいんだって!」
「何が?」
訝しげな顔でレオが戻ってきた。ちゃんと目も鼻も口もあるいつものレオだ。
「出るんだよっ、ここには出るんだよっ。レオが(のっぺらぼうになってた)んが、んだよッ」
はんあーって感じで途中言葉にならず、身振り手振りで説明する。
「ああ、
だからなんだよ? 俺はどっちもノーサンキューなんだよっ。
「ショーカンって意外とビビりなんだね」
と
笑ってる。笑うのは構わないし事実だし――だが、俺が目ん玉をひん
「レオ……お前の後ろに小さいオッサンがいるぞ?」
え?! って感じで振り向くがレオには見えないらしい。
だがそのオッさんが血まみれの包丁を振り上げてヒタヒタと駆け寄って来た時、俺のストレスは爆発した。
「ふんなぁぁ――っ」
駆け寄って来た小さいオッさんの土手っ腹を、前蹴りで踏み抜いた。
たちまち黒い魔石に変わり
「や、や、やってやろうじゃねぇか……『在庫システム』起動!」
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