第38話 クリスタルヤドカリ
脚だけで6メートルはあるんじゃないだろうか?
二階建てくらいの
ここは
その巨体に対して掘られた落とし穴は小さすぎたようだ。
「ギッギッキッ」
と歯軋りのような嫌な音をたて続けたクリスタルヤドカリは、落とし穴に足を掬われただけなようであっさり脚を引き抜いた。
もはや身を隠すつもりもないらしい。2本のカニ爪を振り上げて威嚇している。
「なぁ……こんな時、冒険者ってどうするんだ?」
「逃げるに決まってるだろ!」
と言うと見事な健脚を披露して駆け出すレオ。
俺はと言うとアーマーが重いのか、砂に足を取られて思うように走れずにいる。
「何やってんの?! 早くっ」
振り返って焦るレオに「先に行けっ」と前を指差す。
「ギギギ――ッ」
と後ろから硬いものを擦り合わせる嫌な音が迫ってくる。
いくら鈍重なクリスタルヤドカリだって、歩幅が2メートルもあれば追いついてくる。
振り返るとヤツがいた。
俺の体くらいあるカニ爪を振り上げて、今にも振り下ろそうとしていたタイミングだった。
横っ飛びに飛んで一撃を避ける。
ボスッとくぐもった音がすると、頭の上から砂の雨が降ってくる。
「ぶぁっ」
転がってはすぐに飛び起き、レオと逆方向へ走る。
レオだけは生かさねば――それは俺の使命だ。レオの逃げた方とは逆方向へ爆走した。
「ショーカン……ッ」
遠くでレオが呼ぶ声がする。
ガシャガシャと硬いものが擦れ合う音がするから、例の化け物が俺をターゲットにしているのは確実だ。
もとより
もう一度死んだってかまいやしねぇ――と気配を頼りに飛んでは転げるが、その都度、砂のシャワーを浴びることになる。
『餌で釣りだして落とし穴でひっくり返す。
一度ひっくり返せば、背中のクリスタル貝が重くて起き上がれないから後は簡単なんだけどね』
と言ってたレオの言葉を思い出した。
と言う事は、弱点は腹なんじゃないか? 腹が柔らかいから、ひっくり返すんじゃないか? 確か犬だって服従のポーズは腹を見せるんじゃなかったか?
ならば――と腹を括る。
何度目かの砂の洗礼を浴びると、爪を振り上げたタイミングで飛び出す。
カニ爪は二つある。当然、一つ目を躱した後に二発目がくる。
ドォンッと砂が舞い上がった時、俺の姿はそこになかった。
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