第37話 リビングアーマーの出番ですかね?

「この先に海がある」とレオは言う。その先の祠が安全地帯セーフティーゾーンらしい。


 ――どゆこと?

 俺のマークにレオが手を引いて走り出した先には、確かに海が広がっていた。


 うっそぉ〜ん。


 目の前には確かに海が広がっていた。

 もし体育館に案内されて、そこに海が広がっていたらビックリするだろう? 迷宮ダンジョンって洞窟じゃないの?


 目の前に広がるこの海はなんだ?

 ちゃんと水平線までありやがる。どんな構造してればこうなるんだ?


「不思議だろ? みんなここの話をしたって信じやしないんだ」


 この海の中はどうなっているんだろう――なんて疑問を察したのかレオは


「この海の中を調べようとして帰ってきた人はいないよ」

 と肩をすくめる。


 そっか……誰だっておんなじ事思うんだ。

 おんなじ人間だもんな(今は死霊騎士だが)――とか思っていると、レオはあたりに小石を投げ始める。


「人はじかで日光を当たる事を避けようとするから、あんな木陰にクリスタルヤドカリは隠れていやすいんだ」

 と上下3メートルほどに散りばめて投げ続ける。

 日光ったって謎の光体が浮かんでいるだけだ。ひょっとしてコッチの人たちは、本物のサマービーチを見た事がないのかな?

 それにしてもレオの投げる範囲がデカい。


「ちょい待ち、クリスタルヤドカリってそんなにデカいのか?」


「でなきゃ、脅威度4なわけないじゃん」


「なら、刺激しないほうが良くないか?」


「……だけど、いきなり襲いかかってくるんだぜ? 普段はのろいから大丈夫」


 本当に大丈夫なんだろうな……?

 これってフラグじゃないよな? ――なんて思っていると、木陰の砂が巻き上がった。


「でたよっ、コッチだ」


 と俺の手を取り走り出す。

 なんだかわからないが、とりあえず着いて行くと笹が2本立っている。

 それを引き抜きながら「まっすぐ走って」と告げるレオの言われるままに俺は走った。


 ボスッと鈍い音がして何かが落とし穴にハマった気配がする。


「やったぁ――っ! ビルに言われてここに落とし穴をほらされたんだ」


 と小躍りしているレオ。

 

 そんな土木作業までやらされてたのか? 虐待じゃねぇかよビル?


 あっけに取られていると、光学迷彩を解いてクリスタルヤドカリが姿を現した。


 脚だけで6メートルはあるんじゃないだろうか?

 四階建てくらいのヤドカリ? を見上げてレオがほうけている。


「ウッソ……」


 え? なんすか?


「こんなデカいクリスタルヤドカリなんて、聞いた事ないってば!?」


 ここは出番なんですかね?

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