第34話 リビングアーマーの一撃
第八層への出口が見つかったあたりで、襲いかかって来たサイクロプスに渾身の逆突きを叩き込んだ。
「グォォォ――ッ」
咆哮をあげながら飛び退こうとするサイクロプス。
それもそのはず、俺の渾身の逆突きはヤツのキャン玉を激しくぶっ叩いたからだ。
腰を落とし飛び込みながら、全体重を乗せる空手の逆付きは当然、腰の高さくらいになる。人を相手にする時は、だ。
相手は3メートルを超す巨漢ともなると膝あたり。
そこから上段向けて突き上げるかたちを横から見ると、ちょうど漢字の『入』の形になる。
踏み込んだエネルギーを伝える理想形――着地した左足の反動を腰に伝え、巻き起こる体の捻りを肩、肩甲骨、肘、最後に拳に伝える。
その渾身の一撃がサイクロプスのキャン玉を襲った。
「フゴホォォ」
格闘技の試合でローブローの当たった選手がどうなるか? を見たことのある人ならわかると思う。
サイクロプスは体をくの字に折り曲げて、内股になりながらも必死に倒れるのを耐えている。
腰が折れているから当然顎が上がり、首がさらけ出される。その首にラリアット気味に右手を巻きつけ、左手で剣を持つ右手を制する。左足をずらしながら、巻き込むように体を捻ればキレイに首投げが極まった。
ドォンッと巨体が地面に叩きつけられ、一つ目のクセに苦痛で顔を歪ませた。俺は間髪を入れずに剣を持つヤツの右手に飛びつき、そのまま腕ひしぎ逆十時のかたちになる。
丸太ほどもあるヤツの腕だが、関節を極めて手首を小指側へ捻じ曲げると脆い。痛みに剣を手放した。
それが狙いだった。
体格差のあるヤツに体術で挑むなど狂気の沙汰だ。全てはこの剣を奪ってからが五分。
手放した剣をひったくると、素早く立ち上がり目の前の右手に叩きつけた。
ゴキリッと鈍い音がする。
「ガァッ」
痛みに跳ね起きるサイクロプスだが、腰が引けているから身長差は関係なくなった。
そのまま剣を突き出すと、デカい目玉に吸い込まれていき脳天を貫いた。
ボヒュン、と間の抜けた音ともにサイクロプスは魔石と装備と、肉と皮を残して消えた。
「アンタさぁ…… 脅威度30だよ? サイクロプスって」
やや呆れ顔だ。
「ん? そうなんか? まあ個体差もあるだろうよ。レオは怪我なかったか?」
そう言うと、レオは嬉しそうな笑顔に変わる。
『レベルが上がりました』
頭の中に例のアナウンスが流れた。
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