第31話 リビングアーマーテイムされる

 投石器の使い方を(と言うか投球のフォーム)教えたら、レオは黙々と練習を続けた。


 あとはグルグル回して、ひもを離すタイミングを覚えるだけだ。

「力は必要ない。あとはタイミングだ」

 とアドバイスする。


 ピュンと飛び出した石は的から大きく外れて藪の中へ落ちた。

「紐を離すのが早いぞ、でも今の要領だ。いい感じだぞ」

 注意の後は誉めることも忘れない。


 再びピュンと放る。

 今度は的を乗せている岩に当たった。だいぶ要領を掴んできたようだ。


「いいね! 後は微調整だよ。少し休むか?」


 いや、と首を振る。

 再び二、三投続けていると、ついに的に当てることができた。


「やったぁ!」

「天才! 名投手っ! スッゲェェ――ッ」


 思わずハイタッチの格好をすると、困惑顔のレオ。

「こうやって俺の手を叩いてみてみ? 成功の祝福だから、返さないと。ほれ」

 と促す。


 恐る恐る近づくと、軽くパチンと手を合わせた。

「ヨォシ――ッ」

 と絶叫。なんだか教え子の成長を感じて、こっちが大盛り上がりだ。


 レオの様子を見てみると、少し驚いた顔をしている。

「どおした? 疲れたのか? 少し休むか?」

 と聞くとふるふると首を振る。

 

「疲れたけど、休んでなんかいられない。もうそろそろ行かなきゃ」

 とポーチの中身や、仮眠したあたりを忘れ物チェックしてる。


 ここは回復水だな。

 最後に鉢金を受け取りに来たレオに「飲んどけよ」と差し出した。

 素直にうなずくと、喉を潤していく。


「じゃあ行くか」


 鉢金の水分を拭き取ると、俺たちは安全地帯セーフティーゾーンから踏み出した。


 ――――レオ目線です。


(ビックリしたぁ)


 なぜか悪霊騎士リビングアーマーと何かが繋がった気がしたからだ。

 両手を上げて変な格好をしている悪霊騎士リビングアーマー

「――成功の祝福だから、返さないと。ほれ」

 

 と言われて軽くパチンと手を合わせた時の話だ。

 悪霊騎士リビングアーマーの歓喜の感情が流れ込んでくる。


 これってテイム?

 テイマーという特殊な職業があるって聞いたことがある。

 

 ほとんどが犬型の魔物であったり鷹型の魔物で、圧倒的な力の差を示して屈服させる必要がある。

 脅威度10の悪霊騎士リビングアーマーを、テイムするなんてあり得ない。


 ごそっと何かが抜けていく気がして少しふらついた。


「どおした? 疲れたのか? 少し休むか?」


 と心配気な悪霊騎士リビングアーマー

 そんな機微まで伝わってくるのは、何かしらの魔力絆 バイパスが繋がったのかな?


「じゃあ行くか」


 と告げた彼が歩き出すと、細く光る糸が私の腕に巻きついた。

 

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