第25話 空回りするリビングアーマー

空間収容イベントリの在庫の一角兎ホーンラビットと交換して水を出してやる。

 レオは「なんでもアリだね」と呆れたように肩をすくめた。


――――その鉢金に満たした水で、干し肉をふやかして食うつもりらしい。


 どうせなら煮れば良いのに、と思ったから聞いてみる。


迷宮ダンジョンでは火を使ってはダメなのか?」


「そんなことないよ、迷宮ダンジョンの魔物は魔力に惹かれて来るからね。だから安全地帯セーフティーゾーンでの煮炊きをしたからって関係ない」


 ん? なんか引っかかったが、鉢金の前でむぅと顔をしかめているレオを見て可哀想になった。


「ちょっと待ってろ」


 と言うと、そこらに転がる岩をコの字に並べて竈門かまどを作ってやる。安全地帯セーフティーゾーンの端まで行くと、平たい石を見繕って半円に積み上げ鉢金が落ちないように固定。


 さて、あとは着火なんだが――とあたりを見回す。


 まっすぐな棒と平べったいシダの葉を迷うことなく拾い上げ、棒を手のひらで転がし一心不乱にシダの葉を穿った。(サバイバル的なアレね)


 これで火がついてくれれば良いんだが……。


「ショーカンありがとうね」

 と後ろで声がするが、ああと生返事を返して一心不乱に擦り続ける。


 火種にするつもりのシダの葉は弱すぎて、すぐ穴が空いてダメになってしまう。

 今の俺リビングアーマーには空腹の辛さはない。だが、15の女子には空腹は耐えがたい苦痛だろう。

 

 腹が減ってはロクな考えになるわけがない。

 これは俺がレオの刺々しい態度が嫌でそう思っているわけじゃない。刺々しいのが辛いわけじゃないのだ。(大事なことだから二回言う)


 高校の頃、荒れていた俺が喧嘩して逃げて帰って来るたび

「腹減ったやろ?」

 と無理に晩飯を食わせてくれたお袋が言ってた。


「腹が減るからロクなことしないんだよ、悪いのはアンタじゃない。腹の虫さ」


「意味不明、そしてわけわかんねぇ」

 

 と憎まれ口を叩いていたのに、腹が減ってたのは確かだから飯を食らったは良いものの、口中傷だらけで醤油が沁みて悶絶してたっけ。

 

「ほれ、それが自分のやったバカ。バカバカしいだろ?」


 そう言ってよく笑ってた。

 この娘もきっと腹の虫がそうさせているんだよな? 母ちゃん。(自己弁護)


 せめて温かい飯を食わせてやりてぇ――と必死に火種を作っていると。


 ん……? なんか良い匂いがするんだが?


 振り向くとレオはとっくに薪に火を着けて干し肉を煮ている。


火打ひうち石、使う?」

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